月花石色-366日短編小説‐

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トイレの鏡の前で一息つく。

さっきの彼女の言葉が今でも頭の中で繰り返しその度に胸の鼓動が早くなる。



いやいや、別にあいつはGENEが好きって言ったわけで俺じゃないし。
でも、俺もGENEなわけで…。

と頭の中はこんがらがっていた…。




ふと彼女を1人個室に置いてきたことに気づいた俺は
さすがにまずいと思い部屋へ戻ろうしたとき。




「“あれ？もしかしてGENERATIONSの？”」


トイレ前ですれ違った人に声をかけられてしまった。


声をかけてくれた人を見ると
何年か前のバラエティー番組でご一緒した芸人さんで


「あ、お疲れ様です。その節はお世話になりました。」

すかさず挨拶をした俺に相手方も頭を下げてくれはる。


「おぉー。やんなー。お久しぶりです‼えーと、GENERATIONSの王子様っぽい子じゃなくてワイルドなボーカルさんやなー。」


相手方も結構酔ってるみたいでハイテンションで絡んでくるけど…。


ワイルドなボーカルって…。


「…はい、数原龍友と申します。」

「そうそう、数原くんやん！最近ようテレビで見るわ！すごいね！！」


そこからしばらく、立ち話を続ける芸人さん話を合わせながら。

まだまだ頑張らないとなっと心の中で思っていた…。


立ち話をしだして何分経ったやろ
そろそろあいつのところへ戻ってやらんと心配しとるかも…。


相手方にありきたりな挨拶をして別れた俺は急いで個室に戻った。



「…ごめん。遅なった。」


個室の障子を開けると飲み物を傾けている彼女がいて…。


『遅かったですね。何かありました？？』

「いや、トイレの前で前に共演した人と会ってな。立ち話してたんや。」

ビールからハイボールに変えたらしい彼女は、何事もなかったようにグラスを空けていた。


俺はというと、さっきの芸人の話を引きずっていて…






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