きっと、ぜったい、だいじょうぶ。ふぃふす。【榎i木l淳i弥】 (ページ16)

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「初めまして！今日ガヤ参加させていただきます！」

秋笛の収録も佳境に入る。街の人が大勢出てくるようなシーンで新人さんを数人起用したみたいだ。
よろしくお願いします！と挨拶を交わすとお願いしまーす！と返事に元気があって印象は良い。台本チェックをしていると挨拶を終えた雄馬くんが隣に寄ってくる

「…ね、ね」

「？どうした？」

「さっきの子、ほら」

目線で促されて台本から目を離すと、榎木さんにベッタリな新人さん。あー、なるほど？とは思ったが、目で追っていると榎木さんに限らずっぽい。ミーハーか、元気なのはこういう現場に来ているからか？

「…まぁ、私には関係ないし」

「え"」

「…雄馬くん、人のことより自分の危機感感じた方がいいよ、ほらきた。」

「内田さん！」

会えてとっても嬉しいです！あの作品すごく見てて…と目の前で始まるオタクトークに、ひっそりとその場を離れる。雄馬くんごめん、私には無理。

別に気持ちはわかるのだ。そもそも声優は人脈で仕事を貰うからこうやって色んな人に話しかけることはいい事だし、ファン心理として見てました！と言いたくなる気持ちも…まぁわかる。ただ、ここはまだ収録前の仕事場。今から役に入らなきゃいけないタイミングでこれはちょっと。
ケータリングの場所まで向かい、置いてある焼き菓子を手に取る。

「…あ、せつ、」

「あー榎木さん、これめっちゃ美味しいですよ」

「…マジ？俺も貰うわ」

彼の何か言いたそうな顔を無視して、笑顔で会話を進める。
今じゃないですよ、榎木さん。