あけまして、【番外編】 ページ33
赤い顔をして、息を切らした爆豪が車内の席に座る俺の目の前にいる。
吊革を強く握り閉めて、爆豪は焦ったように俺に言葉を沢山届ける。
爆「あのカフェにいたんだな。泣きながら会計を済ますAなんか見ちまったら、居ても立っても居られなくよ。…マジ、びびらせんなよ。心臓に悪ぃっつの」
爆「あの女は記者だ。人目を忍んで聞きたいことがあるっつうから俺もあの女も私服だった。
雄英のヴィラン侵入の件について、しつこく嗅ぎ回ってやがった。
適当に在りがちなこと言って、かわしたんだけどな。
…だから、お前が思っているようなことはねぇよ。」
爆豪は涙を流しながら呆然とする俺の髪を撫でる。
いや、でも、彼女の格好はどう考えてもデート服だった…し。
待て、そもそも俺と爆豪は付き合ってないんだから…。
いつも間にかとなりに爆豪がいることが当たり前になっていたが…それは傲慢というやつだ。
『俺が思っていることって…何だよ。
別に、俺達は付き合ってないんだから…爆豪がそんなに焦って弁解する必要なんてない。』
爆豪の言葉に安心して、今まで出なかった思いが言葉になった。
俺の涙を見て焦っていた爆豪の顔色が一変した。
爆「・・・あぁ、そうかよ。
じゃあ、お前はオトモダチとキスしたりキスマーク付け合ったり、その先も…平気でやるんだな？
なら、今から俺ともいいよな？オトモダチ、なんだからなｧ？」
耳元で呟かれる殺気の籠もった声に、俺は後悔した。
俺のために息を切らす爆豪を怒らせたかったわけじゃない。
嗚呼、不甲斐ない。爆豪の表情が止まらない涙で歪んでいるのか、感情の表れで歪んでいるのか。
おそらく後者だろう。酷く辛そうだ。
愛おしく思っているヤツでたった十年とちょっとのガキを傷つけてしまった。
慣れたなんて、言えたもんじゃ無い。
重罪を楽しんでいた当時の俺が笑い泣きするほどに滑稽だ。
俺は何も言わずに、爆豪が成すままにした。
強く腕を引かれて、どこぞの駅の男子トイレの個室に連行された。
嗚呼、それもまたいいだろう。
言葉の拙い爆豪らしいやり方だ。
言葉で分からないヤツを行動で分からせようよするやり方。
甘んじて受けよう。
爆豪が俺に成す全ての手段を、俺の100万回目の人生の貢がれ物としよう。
さぁ、好きにしてくれ。爆豪
『爆豪、＿＿＿＿』
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作者名：メチレンブルー | 作成日時：2016年9月27日 19時
