最期の幕開け ページ11
戦闘訓練が始まった。
思っていたよりも危険で、マジな訓練だ。
室内に入った瞬間に、爆豪は緑谷目がけて高攻撃を繰り出す。
麗日は先に核の詮索へ急いだ。
俺は…俺はただ見ていた。
爆豪と緑谷の戦いを、俺は少し後方で眺めている。
緑「っ、Aくん！今のうちに行って！
麗日さんの援護をお願い！！」
爆「あ”？行かせねぇよ、A」
緑谷は、俺に道をつくるために攻撃し
爆豪はそれを阻止する。
なかなか良い構図だ。
俺のヴィラン時代にも、ヒーロー志望の奴はこんな訓練を経験していたのだろう。
俺が葬った何人かのヒーローも、沢山経験を積んで来たに違いない。
だからこそ、俺は重罪を楽しめたのだ。
力を誇示するために侵した重罪が、今は俺を苦しめる。
つまり、器が小さかったのだ。
当時の俺は、自分の個性を過信しすぎていたようだ。
『俺に構わず、二人は戦闘を続けてくれていい。
それと爆豪、俺は逃げも隠れもしない。ここに、いる。』
爆豪の戦い方を見ていると、当時の自分を思い出して恥ずかしくなる。
嗚呼、なんで100万人もの命を手に掛けたのか。
後悔半分で、滑稽さを感じる。
当時は、それが楽しかったのだ。仕方無いと言えば、過去のことだから済んでしまうが。
俺の人生ループが、その重罪の代償なのだ。
緑「っ、Aくん！これは遊びじゃないんだよ！？
危ないから、早く麗日さんの所へ行って！」
緑谷は、俺に懇願する。
必死に息を切らして、俺の鼓膜に充分届く叫声で。
辞めろ、緑谷。
それは過信しすぎだ。俺の失敗談によると、後々恥ずかしくなってくるぞ。
自分が実は思っていたよりも強くなかった時、無性にやる瀬なくなるだろう。
爆「っ、なめんな！」
辞めろ、爆豪。
お前は、自分すら見えていないガキのようだ。
俺の失敗談によると、後々自分が情けなくなってくるぞ。
勝敗がどうであれ、自分がなめられるに値する人間だったことに嫌でも気づくだろう。
『煩いよ、二人して。
ほんの少し戦っていたくらいで、随分と沢山の怪我を負っているじゃないか。
…どうしてくれる、涙が溢れて止まらないだろ。』
俺の涙は、自分の意思とは関係無く溢れ続ける。
心臓がキュッって締まり、痛くて痛くて裂けてしまいそうだ。
緑谷と爆豪は、俺を見て絶句する。
俺の涙はまるで別の生き物のように、勝手に動いて二人の怪我を包む。
全快にまで再生された緑谷と爆豪の体。
俺は、笑うしかなかった。
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作者名：メチレンブルー | 作成日時：2016年9月27日 19時
