prologue ページ2
第1回目の人生で、俺はヴィランだった。
白昼堂々、100万人もの人々を葬った重罪人だった。
強い個性を持て余していて、それを誇示するのは楽しかった。
その重罪を犯した直後、ほとんど人がﾀﾋ体になっている街でヒーローに始末された。
人の生気の抜けた街を見て怒り狂ったオールマイトは、俺の人生に終止符を打った。
オールマイトは、俺の命が尽きる瞬間ある言葉を言った。
ｵｰﾙﾏｲﾄ「
金髪碧眼だった俺を外国人だと思ったらしく、英語で言った。
この暗示のせいで、俺は葬った命の数だけの人生を繰り返す羽目になった。
人生を繰り返すたびに、容姿も個性も性別も立場も変わっていった。
時には幼女、時には老人、時には父親。
個性は人生を繰り返すに連れて、戦闘向きの個性から程遠くなっていく。
かつての自分の個性を思って、嘆きたくなる時もあるくらいに。
ついさっき、第99万回目の人生が終わったばかりなんだ。
小癪にも99万通り目の個性は、植物の成長を早めるだけの能力だった。
九州の田舎に住む平和な家族の祖父として、家族に看取られた最期だった。
反吐が出るくらいに、胸くそ悪かった。
俺を見る慈愛に満ちた目に吐き気がする。
とうとう俺は、第99万回目の人生までずっとオールマイトの暗示を守らなかった。
守るつもりも、到底なかった。
第99万回目の人生を終えて、気が遠くなるくらいの月日を経験した俺は
そう簡単に泣けないし、ましてや誰かを愛するなんて出来るはずがない。
嗚呼、もうすぐ100万回目の人生が幕を開ける。
これで、俺が奪った命の数だけの人生を経験することになる。
100万回目で人生が終わる確信はないが、できれば解放されたい。
この不愉快な徒労を、今すぐにでも終わらせたい。
重罪なのは分かってる。
その重罪が、俺は酷く楽しかったんだから。
もうこの際、ヒーローでもヴィランでも誰でも良い。
俺を人生から解放してくれ。
一心に願って、目を閉じた。
次に目を開いた時、見知らぬ天井が見えた。
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作者名：メチレンブルー | 作成日時：2016年9月27日 19時
