9#任命 ページ28
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トントンさんとオスマンさんに連れられる形で、講堂の奥の部屋へと入る。
あれからちょうど一時間を、静かな、しかし緊張感ある空間で過ごし、私は殿下の言い付けを守るべくここを訪れた。
人知れず深呼吸をして出向いた先、いくつもの視線を受け止めて、ひ弱な心臓が悲鳴を上げる。
「……あぁ、ご苦労様」
『お待たせいたしました』
構わないよ、と軽く笑い、殿下は座っていたソファーから半身をずらした。
彼の隣に空いたちょうど一人分のスペースに、私はぎくり、身を竦ませる。
「座ってくれ」
『……。いえ、殿下のお隣に座るなど――』
「いいんだ、ここに座りなさい」
『――っ、失礼、いたします』
そこに座るということが、私のような下級貴族の、しかもただの娘に過ぎない人間にとってどれほどの重圧を与えるか。
聡明な彼が推し量れないはずがない。にもかかわらず押し通すのは、そこにしっかりと意図があるからだ。
「――君の、今後の身の置き方が決まった」
『……。はい』
「君はここに残り、しばらくの間、竜王の側について生活してもらう。急な決定ではあるが、やってくれるね？」
ごくり、溜まった唾液を呑み下す。
膝の上で重ねた手を、じいっと見つめたまんま。
『――はい、殿下の命とあらば』
ふ、とすぐ隣から短く笑うのが聞こえた。
「と、いうことだ。本人の了承も得られたし、この件はこのまま進めても宜しいかな？」
「えぇ、こちらとしても有り難いばかりです。よろしくお願いいたします」
向かいのソファーに座ったグルッペンさんが、あの薄ら笑いを湛えて言う。
……いや、実際私は俯いていたから、そんな感じの表情なんだろうなと思っただけだが。
とにかくこの「私が竜王の側について生活する」という件は、殿下とグルッペンさんの総意ということで間違いないらしかった。
『(……まぁ、少なからずこういう展開になるだろうとは思ったけど)』
村側の人間が驚くほどの偉業を成した私が、このまま何もなくこの地を離れるようなことにはならないだろうとは予想できた。
しかしそれでも、一度王都に戻らず、というのには驚いたが。
行き来にかかる時間と負担を考えれば妥当ともいえようが、ほんの数日前までは、こんな展開想像すらしていなかったのだから。
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感情末期 - コメント失礼しますー!巡回いってきます!!大好きです!!いってきます! (2021年10月5日 22時) (
レス) id: c7b86b77aa (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 蓮さん» コメントありがとうございます。頑張って組み込んだコメディ部分、ウケたようで嬉しいです(笑) 応援ありがとうございます。 (2020年5月21日 2時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - コメント失礼します！ふにんきのところ笑っいました。更新頑張ってください！応援してます！ (2020年5月21日 0時) (レス) id: a5a3967b27 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 櫻華さん» コメントありがとうございます。これからもご満足いただける作品になるよう頑張ります！このご時世なので、櫻華さんも重々ご自愛くださいね。 (2020年5月20日 22時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 初コメ失礼します！リアリティのあるお話で、とてもハマりました！お身体に気をつけて、これからも更新頑張ってください！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: e0d01a51ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月24日 1時
