【d!】明日の月も綺麗でしょうね？ (ページ27)

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◆ ページ27

○月‪✕‬日
memory:????

『久しぶりに来たな〜！まだこのビル残ってて良かった〜！』

「…いきなり出掛けようなんて言い出したと思ったら……こんな遠くまで来といてお目当ては廃ビルの屋上っすか？」

『私、昔この街に住んどったんよ。このビルは元々私が住んでたマンション。この屋上から眺める夕焼けが、何よりもだいすきだった。だから、君にも見せたくて』

『泣きたくなる様な赤を、君と一緒に見たかってん』

『ねえショッピ、』

『少しだけ、私の話を聞いてくれる？』

ザザッ

何故かこの日の記憶データだけ途中で強制終了してしまう。
貴女と過ごした1000をとっくに越えるデータの数々、どれを再生しても鮮明に流れてくれるのに共に夕焼けを見たあの日のデータだけは上手く再生出来ないのだ。

あの街から家へと戻ってきた翌日の早朝、窓から見えた数台の車を確認したのち貴女は俺に少しの荷物を押し付けて裏口から逃げなさいと命令しました。
ああきっと、俺の存在がバレてしまったのだなとすぐに分かりました。
一緒に逃げようと口を開く事も許さず貴女と別れることになった俺は、身を隠しながら数日はふらふらと歩いていた様に思います。
"さむい"と鉄の体が訴える度に一つずつ再生していた貴女との記憶、途中でノイズが走り再生出来なくなっていたあの日のデータを見た時に、何故かあの場所に行かなくてはならないと勝手に足が動いていました。
貴女の隣で焼き付けた風景、街並み、そして忘れ去られた様にぽつんと佇む古いビル。
それらを頼りに今日この日、やっと辿り着くことが出来ました。

貴女と並んで眺めた夕焼けを、この屋上で一人見つめている。

茜色が、回路を、刺す。

バチッ、バチ

『少しだけ、私の話を聞いてくれる？』

なんだ、これは。