◆ ページ26
「俺は知ってましたよ。この世界には俺以外のアンドロイドがわんさかおる事。そのアンドロイドの製造及び販売はアメリカに一社、日本に一社、計二社にしか許可されていない事。許可が下りている二社以外の企業、或いは個人でのアンドロイドの製造販売は違法である事。もしそれが発覚した場合、極刑または……言わなくても分かりますよね？時代遅れも甚だしい罰を受ける事になる。そんな重罪を犯してまで俺を作ったのは、知恵を付けた鉄屑を人間にしようとしているのは、忘れられない恋人の代わりが欲しかったからですか？それとも自分を慰める為ですか？生憎俺には生殖機能は備わっていません、アンタが俺にパーツを追加してプログラミングをすればラブドールという役割も兼用出来るやろうけど、」
『もういい』
「？」
『そんな劣情に塗れたしょうもない理由で、私は命を作ったりなんかしない』
「A？なんで？なんで泣いてるんすか」
『触らないで』
『きっと、君に言ったって理解して貰われへんねやろな。心と名付けたプログラムをゆっくりと育てていけば、アンドロイドだって人になれるんやって信じてた。いや、前例だってある、件のアンドロイドはプログラムの暴走に耐え切れんくなって活動を停止してしまったけれど、私は、私なら必ず成功させられる、君を人に出来ると信じてた。…もう少しだと、思ってた』
「A、」
『私の負けや、君の言う通り。アンドロイドは人にはなられへん、心だなんて名付けても所詮はただのプログラムやったんやわ。今ようやく理解出来た』
『もうええよ、最初の命令を削除して。それから……しばらく一人にして』
「………」
「……？」
「……………さむい、」
○月✕日
memory:01220
「A」
『…』
「A」
『食事を部屋の前に置いたらすぐに立ち去りなさいと命令したはずやけど』
「さむい」
『なに？』
「あれからずっと、さむい。アンタの顔が見れなくなってから、ずっと。理解が出来ない、解明出来ない、でも、恐らく、俺はアンタの心を傷付けた。俺には分からない痛みをアンタに与えてしまった、んやと思う。だから……えっと……すみません、でした。ごめんなさい」
「これが、現段階での最適解だと思います」
『……しゃあないなあ、』
『いいよ、私こそごめん。君がさむい思いをしたのは、私の言葉が君を傷付けたからだと思う。突き放してごめんね、仲直りをしよう』
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