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『やばい、やっぱ寒いかも』
「そりゃ寒いだろ」
『でも起き上がれない、どうしよ』
「いつもの残業で腹括った時の根性どうしたんだよ、その根性で起きろ」
『今体起こしたら中身が出る気がする、意地でも私はこの体勢でコーヒーを飲むぞ…コーヒーを飲んで胃を落ち着かせてから…話はそれからだ…』
「終電無くなるぞお前」
『うわ〜!無理かも〜!ベンチから起き上がるのもこんなに渋ってるのに駅まで歩くの!?なんであの時の私タクシー大丈夫とか言っちゃったの〜!何がひとらんに送って貰いますだ!この男に全幅の信頼を置きすぎだ数十分前の私〜!』
「数十分前の自分を責める前に巻き込んだ俺に対して謝りを入れろよ」
『むり、むりだ、ひとらん、私、やっぱここで寝る』
「正気に戻れ」
『無理!ほんっとに無理!!ひとらん家近いんでしょ?私の事は気にせず行って!』
「茶番する元気があるなら起き上がれって…」
はあ〜〜〜…と深い溜め息を吐き出し天を仰ぎ出す男。
そんなに呆れられてもこればっかりはどうすることも出来ないんですよ、だって動かないんだもん。体が。
「……あのさ、」
『ん?』
「今かららしくない事言っていい?」
『いいよ、私が寝落ちるくらい長くなきゃね』
「ウチ来る?」
しん、と一瞬辺りが静まり返る。
冗談抜きで時が止まった気さえした。
今なんて言った?
硬派と言うとなんだか聞こえが良くて悔しいが堅物である彼の口から飛び出た言葉を脳が上手く処理出来ない。
やっぱりまだ酔いがだいぶ残っているのかもしれない。
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