備忘録 (ページ44)

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22-1　分離不安ページ44

5人兄弟 30.28.27.20.20

そろそろ夕飯の支度でもしようかと筆を置いたとき
玄関が開く音と、ドンっと何かが落ちた音が聞こえた

階段を降りて玄関を見ると潤が倒れこんでいた

「潤!じゅん!」

起こそうと体に触れると異常なまでに震えている
パニック発作だろうか。

「潤大丈夫…もう大丈夫だよ」

目の周りにしわができるほど強く閉じられた瞳
手もギュッと握りこまれている

覆いかぶさるように抱きしめれば白いビニール袋が目に入った

「…病院一人で行ったの？」
「……っ」

ビニール袋に入っているのは薬局でもらったであろう1ヶ月分の薬
一人で病院に行くのは潤も俺たちも怖いからいつも兄弟の誰かと一緒に行くのに。

病院に行ったかと問えば体がびくりと反応した

「……怖かったでしょ…頑張ったね…」
「…っ……った…」
「ん。よく頑張ったよ」
「……わい…こわ…」
「うん。もう大丈夫だよ。お家まで帰ってこれてるよ」

一人で買い物に行くのすら避けるのに病院なんて。
帰ってきてから体がずっと硬直して震えていることが、
潤が家を出てから帰って来るまでずっと恐怖と戦っていたことを物語っている。

「がんばったね…」
「…こる？」
「怒るわけないよ。潤がこんなに頑張ったんだから」
「…めんなさ…っ」
「謝ることないよ。大丈夫。がんばったね…」

ゆっくりゆっくり時間をかけて、恐怖で固まった心と、体をほぐしていく。
玄関だからブランケットも温かいお茶もないけれど。

「立てる？…ゆっくりね」

やっと立ち上がれるようになっても足はがくがく震えていて。
本当はもう部屋で寝かせようかと思ったけど、この状態で階段は上れない。

「がんばったねぇ…」
「…っ…ふぅ…っ」

やっと家に帰ってきたことを実感したのか、今度は涙が止まらない。
次に帰ってくるはずの雅紀に晩御飯の支度をお願いするメールを送って、
体を撫でて、抱きしめる。
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玄関を開けると、電気はついてるのにリビングはえらく静かだった

「ただいま…」
「あ、翔ちゃんおかえり。ご飯食べる？」
「ん。食べる……えらい静かだけど。潤？」
「…潤ちゃん、一人で病院行ったんだって」
「…え。一人で？」
「帰ってきてから結構不安定だったみたいで。さとにぃとかずが一緒にいてくれてる」
「大丈夫そうなの」
「分離不安が長く続くようなら来てくださいって」
「……」
「責めないでやってね？潤ちゃんの事」
「ん。分かってる」