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第15話 異常 ページ17

ヴィクトルside

俺とAが初めて出会ったのは、今から8年前のことだった。

ホームリンクを持たず、修行僧のように世界各地を転々としていたAが、俺のホームリンクに来た。


「この子は卯月A。
私はコーチのメリンダよ。」


珍しくヤコフが練習を中断したと思ったら、腰まで伸ばした金色の髪を靡かせた女性と、彼女に肩を抱かれた少年がいた。


どうやら、ヤコフとメリンダさんは知り合いらしい。



「よろしくお願いします。」





幼さの残る身体


感情ののらない表情


平坦で薄っぺらい言葉




触れたら砕けそうな雰囲気は、12歳とは思えない魅力があった。



それ故、他の者は過度に関わるのを避けていったが、俺は無性に気になって、むしろ積極的に関わろうとした。


練習の前後や、食事中も共に過ごす日々。


その中で、Aが今と同じように、リンクにいる時だけは感情を露わにすることを知った。




まあ、当時はAが役になっていたことは知らなかったんだけども。



日常生活では無愛想なAに、理由を聞いたことがあった。




「Aはなんでリンクにいる時は笑えているのに、いつもは冷たい態度をとるの?」



我ながら怖いもの知らずだったと思うよ。

するとAは表情を変えないまま答えた。









「・・・・・奴 隷」




「えっ?」






「スケート選手は、氷の奴 隷だ。







氷の上で最高の演技をするためだけに、全てを捧げなければならない。



笑顔も


感情も


・・・・自由も。




それらは、僕には必要のないものだから。」



ざわり、と肌が粟立つ。



「な、にそれ。」


暗い深淵から虚ろな声が響く。

それに呑まれないように、目の前の相手を睨んだ。




「本気で言ってるの?

もしその通りなら、俺はスケート選手として失格ってことになるけど。」





生気のない目を向けたまま、僅かに首をかしげた。

「そうだね。

君も僕も同じスケート選手だ。

それなのに、君は感情豊かだし、よく笑う。

一方で、僕にはそれができない。



この差はいったい何だろう?

この定義のことは、僕もよく分からないんだ。」








だんだんと悪寒が増してきた。





「ならなぜ、それに従うの?」


その先を聞いてはならない、と頭の中で警鈴が鳴る。






「だって、先生が決めたことだから。」




先生の言うことは決かなくちゃ、ね?







その日、俺はAの歪さを目の当たりにした。

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作品ジャンル:アニメ
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るろまる(プロフ) - フィーアさん、コメントありがとうございます。ノンビリですが更新していきたいと思っています! 感想、とても嬉しかったです! (2017年1月12日 12時) (レス) id: 6d0c896ab0 (このIDを非表示/違反報告)
フィーア - とても面白かったです!!!更新頑張ってください!! (2017年1月9日 17時) (レス) id: 65845fd388 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:るろまる | 作成日時:2016年12月11日 22時

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