大倉くんと親友【緑】

梱包 ページ42

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目覚まし時計がなる前に目が覚めた。


カーテンの隙間から差し込む柔らかい陽の光はなかなか開かない瞳孔に易しかった。



体を起こしてグッと背伸びをする。

隣に寝ている白い毛玉を起こさないようにそっと立ち上がると、本棚の前に座り込んで最後の梱包を始めた。


ストーカーに気づかれないように今日の引越しは私が部屋にいない昼の間に済ませる手筈だ。


細心の注意を払って、職員室内でも私が今日引っ越すことを知っているのは定年間近の校長先生だけ。



がむしゃらに働いて努力して築いた関係も、信頼も、絆も、あの手紙のせいで全てチャラだ。



年配の先生方と仲良くなるために覚えた麻雀も、同期のヤンチャな新井先生に教えて貰ったダーツも、生徒に授業を楽しんでもらうために考えた語呂合わせの歌だって。



全部全部、毎日毎日ポストに投函されるあの白い封筒と写真のせいで。



嫌悪感を抱きながらドラゴンボールの最後の一巻を詰めてダンボールの封を閉じた。


最後のダンボールに詰めるのは、たくさんのCDとお父さんの形見のギターピック。


赤に金色模様のそれは、良く見るとすり減っていてお父さんの音楽に対する熱を感じた。



大切に布にくるんでダンボールに詰めると、それも封をする。



気づけばカーテンから差し込む光は強くなっていて、一気にカーテンを開けた。


起きてきたとうふはゆっくりと水を飲んでいる。

その頭を撫でると、最後のスーツに着替えた。



コーヒーを飲んでヒールに足を入れる。


意を決してドアを開けた。


最後の日が始まる。





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