大倉くんと親友【緑】

渋谷すばる ページ25

∴







｢このジャニーズの子、めっちゃかわいい｣



金曜日の夜。


お母さんはだんだん仕事が落ち着いて家にいるようになった。


どんどん大人に近づくに連れて、お母さんがどういう仕事をしているのか分かってきたけど、それを汚いだとか思うはずもなくて、反抗期と言える反抗期も来なかった。


家にいることが増えたお母さんは、前より雰囲気も柔らかくなってよく笑うようになった。



それが嬉しくて、私もとうふを撫でながらお母さんの横に座る。





｢どの子？｣

｢この子。｣



金曜日にサングラスをかけたあの人が司会をするあの音楽番組。


センターで踊りながら歌うのは、薄い体に赤のジャケットを来た男の子で、孤高な歌声に思わず声が出る。



｢歌上手いなあ｣

｢ほんま。お母さんファンになりそうやわ。｣

｢いっつも話してた子おったやん？あの、引越ししちゃったって言うた子。｣

｢おくらくん？｣

｢そうそう。あの子もジャニーズ目指してんねん。いまジャニーズJrやで｣

｢ほんまあ！がんばってほしいなあ！｣




お母さんは自分の事みたいに喜びながら、その歌声に耳を傾けた。



｢この子、お父さんみたいな歌い方。よお似てるわ。｣

｢言われてみればそうかも｣

｢お母さんもうメロメロや。渋谷すばるくんにメロメロやわ。｣

｢本気やん笑｣



お母さんが楽しそうに曲を口ずさむ。


私は笑いながらまた、テレビの中に映る渋谷すばるくんを眺めた。




誰かに似てる、気がする。







∴

春過ぎて→←新しい日常

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す