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白の塊 ページ19






ゆっくりと歩くAに傘をさしてあげながらAの家の方へ向かう。


箱の中の白い塊は時折、なぉだとかにゃあだとか声を上げて、それが聞こえるたびに2人して立ち止まった。



新年なのに、Aのお母さんは家にいない。

何度も遊びに来たけど、Aのお母さんに会ったことは1度もなかったな、なんて思いながら1人でさしていた2つの傘を閉じた。



ダンボールをそっと傾けると恐る恐る足を伸ばした子猫は、ゆっくりと地に足をつける。

「にゃ」

そしてひと鳴きすると、Aより先に部屋の中へと入っていった。

あとを付けると座布団の上にくるりと尻尾を巻いて行儀よく座っている。


明るいところで見た子猫はとっても綺麗な毛並みで、近づいてみると目は綺麗な金色。


「めっちゃ美人な猫やなぁ、」

「ほんまや、連れてきて良かった!」


Aはヒモを猫の前にチラつかせて遊ばせる。

ひらひらと軽やかに飛んだり走ったりする子猫はとても愛らしくて、寒空の下に捨てられていたことに心が傷んだ。



「よし、とうふや!」

「え?」

「この子の名前、とうふにする。今命名した!」



遊び疲れてウトウトとAの膝に乗った白い塊を撫でながら、Aは素敵な名前を付けた。


とうふ


真っ白で柔らかくて優しくて甘ったるくなくて酸っぱくなくて辛くない。

軽くて脆くて壊れやすいけど、なかったら少し寂しい。


まだまだ新しい寝床に慣れなくて、Aの膝の上で目を閉じたり開いたりするとうふ。



「んふ、可愛い名前やな。」

「そうやろ?」


Aは満足そうに頷くと、柔らかいとうふを柔らかい座布団の上に乗せた。

ゆっくりと目を閉じるとうふにひらひらと手を振って玄関に立つ。


「もう行くん?」

「うん、ストーブの灯油買わなあかんねん」

「とうふと灯油って発音似てるな」

「ほんまや!」

「ありがとうここまで寄ってくれて」

「全然やで、なんか手伝えることあったら言うてな。」

「うん、気つけてな」

「うん、ばいばい!」


立てかけてあった青い傘をとって外へ出た。

雪は少し強くなっていて、俺はガソリンスタンドへ走る。


暖かい小さな命が途切れないようにとはらはらした。





とうふ→←ダンボール



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じょび(プロフ) - tadamomopiさん» ももくらさんやろ!!!IDでわかるんやからね!私も好き!!! (2018年12月17日 8時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
tadamomopi(プロフ) - すき!! (2018年12月8日 20時) (レス) id: dd33592cf0 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - ゆうさん» 住野よるさんの作品素敵ですよね!嬉しいお言葉ありがとうございます!頑張ります!! (2018年8月29日 16時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - そうです!!!住野よるさん私も大好きです!!!これからもじょび様の作品楽しみにしております(^^) (2018年8月28日 22時) (レス) id: d221d00b99 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん!コメントありがとうございます!住野よるさんの文学作品のことでしょうか、、、それならとっても嬉しいです!あの作品、とっても大好きで何回も読み返したのを思い出します(> <)意識はしてなかったのですがとっても嬉しいです! (2018年8月28日 22時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:じょび | 作成日時:2018年4月8日 1時

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