初めての ページ13
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「やばい!悟空が!!!」
「ちょ、うるさいって笑」
2人で並んでジャンプを読んで、コンビニで買ったポテチを開けた。
Aはドラゴンボールの展開に興奮しながらパラパラとページをめくる。
初めて入ったAの家に感動しながらぐるっと辺りを見回すとたくさんレコードが積んであった。
「あれって聞けんの?」
「聞けるで!聞く?」
Aはレコードを1枚流す。
ゆったりとした男の人が歌ってる歌で、Aはそれを目を閉じて聞いていた。
優しい声はさっきのカルピスみたいに俺を癒してくれる。
「こっち来て!」
曲が終わるとAに手を取られて2階へと上がった。
「さっきのな、私のお父さんが歌ってんねん。お父さんは私が産まれる前に死んでんけど、お父さんの楽器残ってんねん」
俺はお父さんがいないという急な告白に気を取られて返事ができなかった。
でもAはそれを気にすることなく俺の手を引いて、「A」とネームプレートが下げられた部屋に入った。
「お父さんが歌手やった話内緒やで!」
「うん!」
口元に人差し指を当てて笑うAに、気を使わなくてもいいのかと肩の荷が降りる。
ガチャと音を立てて開いた扉の先には、古いギター、ベース、そして、ドラム。
初めて見る楽器の数々にテンションが上がった。
「すげー!!!」
「これ全部お父さんのやってん!」
「A弾けるん?」
「んふ、ちょっとだけ!」
そう言うと、ギターを肩にかけて座った。
Aが弾きながら歌うのはさっきのレコードの曲で、男の人じゃない、Aの柔らかい声が俺の心を揺らした。
「すごい!!!!」
「んふ、」
「なあ、これは?」
「ドラム?、それちょっと得意!」
中でも俺が気になったのはドラム。
イスに座って、Aはスティックを持った。
ガムシャラにドラムを叩くAは、ギターを持っていた時とまた別のかっこよさがあって、俺は思わず体でビートを刻んでしまう。
俺が人生で初めて生のドラム演奏を聞いたのはこの時だった。
この日から俺は、ちょくちょくAの家に遊びに行くようになった。
家族と喧嘩した時、友達と喧嘩した時、筆箱を失くした日、飼っていた犬が行方不明になった日。
悲しい出来事があった時が多かったけれど、楽しいことがあった日も、何も無かった日も、Aに会いに行くと、カルピスを出してくれた。
たまにギターを持って歌ってくれるAの歌声がとても楽しみだった。
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じょび(プロフ) - tadamomopiさん» ももくらさんやろ!!!IDでわかるんやからね!私も好き!!! (2018年12月17日 8時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
tadamomopi(プロフ) - すき!! (2018年12月8日 20時) (レス) id: dd33592cf0 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - ゆうさん» 住野よるさんの作品素敵ですよね!嬉しいお言葉ありがとうございます!頑張ります!! (2018年8月29日 16時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - そうです!!!住野よるさん私も大好きです!!!これからもじょび様の作品楽しみにしております(^^) (2018年8月28日 22時) (レス) id: d221d00b99 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん!コメントありがとうございます!住野よるさんの文学作品のことでしょうか、、、それならとっても嬉しいです!あの作品、とっても大好きで何回も読み返したのを思い出します(> <)意識はしてなかったのですがとっても嬉しいです! (2018年8月28日 22時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:じょび | 作成日時:2018年4月8日 1時