第36話 ページ36
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「いいの？」
額に滲んだ汗が太陽に反射して、輝きを放つ。風に背を向けた越前は揺れる髪の毛を抑えながらAに問いかけた。
青学の柱として、追われる背中として。そんな多忙を極める越前が改めてAを誘ったのは最近の事だった。
「A先輩のしたい事がしたい」と華奢な指で琴線に触れた越前に、Aはわがままを言った。越前は面食らったように動きを止めてAを見つめた。
在り来りな、良くある話。それを期待していただろう越前にAは笑った。彼は、感情が顔によく現れる子だった。
いいの、と答えたAに越前は小さく微笑んでラケットを握った。
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ボールの弾む音が聞こえていた。
テニスに真剣に向き合う越前の横顔が酷く大人に見えてAは目頭が熱くなるような感覚に襲われた。
越前リョーマと接してきた今までの月日は、偽りではなかった。
越前の存在はAの存在証明で、Aの存在は越前の存在証明だった。そして、いつの間にか冬が訪れた。
テニスボールを追いかける越前が眩しかった。きっと、それはあの、遠い夏よりも。
「これ、楽しいの？」
「楽しいよ、すっごく」
越前には慣れ親しんだテニスボールを子供のように目で追うAは、越前の目にはさぞ滑稽に映っていたことだろう。彼が満足気に笑ったから、Aも笑った。寒さなんて気にならなかった。
越前のサーブが相手コートに入った。
「今の越前くんの得点？」
「相手いないのに得点もクソもないだろ」
「確かに」
テニスの知識なんて分からなかった。テニスのことなんて、何にも。
「越前くんが、世界で1番カッコイイよ」
Aが笑顔で言えば、越前はその綺麗な瞳にAを映した。
2人の間を風が通り抜けた。
夕焼けに照らされた越前は、「…ちくしょう」とシャツの袖で頬を拭っていた。Aは頬杖をついて越前を目に焼きつけた。彼の証左をひとつ、ひとつ。
Aはこの命が尽きるとき、どうかその時、走馬灯に越前の姿が映ればいいと思っていた。無意識に、言葉を呟きそうになった。
この世で1番、彼の事を見つめていたのは私だと思ったから。
夕焼け色に染った彼の頬を、染めたのはどうか私でありますように。祈ることは罪では無いのだから。
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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます❤︎ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました！あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました！ (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ！失恋組！初遭遇です！やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます！ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ！』私も失恋した気分になりました！ (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2021年9月17日 0時
