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第32話 ページ32

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無事に内部推薦も決まってからは、それはもうあっという間で。気が付いたら12月に片足を踏み入れていた。


そうして、高校生最後の行事があれよあれよと終わっていった。


最後の球技大会、最後の体育祭、最後の文化祭。そして、最初で最後の卒業アルバム撮影。黒光りしたカメラが学生たちの背景までもを映し出していた。

カメラマンの笑って、の合図に合わせてAは頬を上げた。高校生活の終わりが目と鼻の先にあったことを実感させられた。



「卒業って感じだね」



どこからが聞こえた声を背後に、Aは帰路へと着いた。





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コツコツと鳴るローファーの音が、閑散とした学園内に反響した。


気が付いたらスカートの丈は短くなっていて、ブレザーも体に丁度よく馴染むようになったし、ローファーのヒールも高くなっていた。


首に巻いた赤いマフラーに触れ、Aは白い息を吐いた。Aの白い肌に赤いマフラーはよく映えていた。学生たちがAを見つめていたことも、当人が知ることはなかった。



胸下まで伸びた黒髪が歩く度に揺れる。

Aは自分の髪の毛がここまで伸びていたことに、初めて気付いた。春先、髪の毛を切るか悩んだ自分がいたことなど、すっかり失念していた。






冬の冷たい風がAを背後から包み込んだ。


視界の端で揺れた枯葉にAは手を伸ばした。

校内有数の桜の木は、春の訪れを待ち望んでいるようだった。3年に進級した頃、鎖骨あたりまであった黒髪を仰ぎながら桜の木の下へ避暑地を求めに来たのが懐かしかった。






ふと、Aの脳裏に懐かしい光景がフラッシュバックした。



桜の木の下に佇む小さな影を。何をするでもなく、ただ桜を見上げていたあの影を。そして、遠くで聞こえたあの音を。



忘れていたのは、私の方だったの?



「いた」




今、猛烈に顔が見たくて。声が聞きたくて。





「またここにいたんだ」



今すぐ駆け寄って、体温を確かめて、貴方は確実にここに居るのだと確証が欲しかった。私は、彼に出会ってから欲張りになってしまった。


偶然が重なればそれは必然になる、必然が重なればそれは運命になる。運命など、この世には存在しない。





だけど、この瞬間だけは、運命を信じてみたかった。






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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます‪‪❤︎‬ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました!あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました! (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ!失恋組!初遭遇です!やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます!ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ!』私も失恋した気分になりました! (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:福原 | 作成日時:2021年9月17日 0時

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