第24話 ページ24
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「それじゃあ僕も帰ろうかな」
嵐が過ぎ去った図書室は再び静まり返り、3人の呼吸だけが残っていた。不二は机の上に広げていた課題を片付け、鞄を手に持った。そんな不二を見たAはそれに習うように課題を片付け始めた。
初夏、自動販売機の前で偶然耳に入った話をAは思い出していた。ただの噂、女の子の好物の噂話がAの思考を阻んた。
越前が彼女に好意を抱いている、という趣旨の、ただの噂話。信憑性は限りなく無いに等しかった。
「お嬢さん、筆箱お忘れですよ」
「あ、本当だ」
筆箱を不二から受け取ったAは不思議な感覚に陥っていた。
机の上には広がったままの問題集とルーズリーフ。どこかで聞いたことのあるフレーズに胸を曇らせた。
「1年生って初々しいよね〜」
Aの腕に抱きつきながら彼女は目尻を下げた。
友人は先程の1年生の面影を思い出してニンマリ、という効果音が聞こえるくらい口角を上げた。確かに、可愛い子だった。
「あの子が竜崎さん?」
Aの片付けをする手が止まった。
不二は「そうだよ」と言いながら頷いた。可憐な彼女の、長い三つ編みが揺れた気がした。そうかあの子が、と顎に手を添えた友人にAはポーカーフェイスを装った。私は、どんな顔をしていたのだろう。
高校2年生で履修した小説の一節がふとAの脳裏を過った。
あれはなんの小説だったか、Aは思い出せなかった。2問だけ進んだ現代文の問題がAをじっと見つめていた。
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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます❤︎ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました!あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました! (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ!失恋組!初遭遇です!やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます!ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ!』私も失恋した気分になりました! (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:福原 | 作成日時:2021年9月17日 0時