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第11話 ページ11

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「越前くん」



友人からの痛い視線を背にAは教室後方の扉に立つ越前に歩み寄った。


「先輩」


越前は大きな瞳でAを見据えた。透き通るような、純真な瞳にAは何故か背徳感を覚えた。何かを言おうとした唇が動きを止めた。


そういえば、どうして彼は私を助けてくれたのだろう。

考えてみれば、私と彼は直属の先輩後輩でもないのに。まず、彼との接点はどこにあった?Aの頭の中に思い浮かぶ疑問は止まらず、目の前にいる越前の存在さえも忘れてしまいそうだった。


「先輩、聞いてる?」



ハッ、とAは弾かれたように越前を見詰めた。そんなAに驚いたのか、越前も大きく瞬きをしたあと少しだけ口角を上げた。


ごめん、とAが言えば越前は携帯を取り出して、骨ばった人差し指でAのワイシャツの胸ポケットを指した。

ん?何だ?疑問符を浮かべたAに越前は「連絡先」と簡潔に告げた。

越前に半ば誘導されるようにメッセージアプリを開き、あれよあれよとAの友人欄に「リョーマ」の文字が並んだ。




「常習犯め」

「まさか」

先輩だけだよ、と年相応の笑みを浮かべた越前にAは目を丸くするしかなかった。
この小生意気なヒーローめ。Aはそう思いながら越前の肩を押した。さすがヒーロー、越前の体はビクともしなかった。


そんなAを他所に、越前は背後の不二に会釈をしてから、時計に目をやった。

授業開始時刻まであと3分、越前は小さく息をした。



「じゃあ、また連絡します」

そう言って越前はAに仕返しをするように、Aの肩を軽く押した。

油断していたAの体は想像以上にグラつき、後ろに重力を持っていかれた。

あ、やばい。Aはこの後来るだろう痛みに覚悟を決めた。




グン、と右腕を引っ張られた。Aの体は急激な動作に追いつかずに、ただ身を任せるしかなかった。





「っごめん先輩、大丈夫?」


ふと視線をあげればAの目と鼻の先に越前の綺麗な顔があった。いつも余裕そうな悠々とした彼の顔が、微かに焦りに揺れていた。


彼も動揺することあるんだな、なんて呑気に考えていた。


越前の右腕はAの右腕を捕まえていて、左腕でAの腰を支えていた。あの時と同じ匂いがした。
持て余されたAの左腕が宙を泳いでいた。





いや、大丈夫だけど。大丈夫だけど、さ。



背後からの視線が痛い。授業開始時刻まであと、1分になっていた。


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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます‪‪❤︎‬ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました!あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました! (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ!失恋組!初遭遇です!やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます!ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ!』私も失恋した気分になりました! (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:福原 | 作成日時:2021年9月17日 0時

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