君という季節【越前リョーマ】

第2話 ページ2

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教諭が黒板に白いチョークで文字の羅列を書く様子を横目に、Aは小さく欠伸をした。



高校3年生になって、何か変わったことと聞かれれば無いと答えるだろう。
強いて言うのであれば、教室の階数が上がったことと、見知らぬ顔が増えたことくらいだった。



3時間目の古典の授業は驚くくらい退屈で、Aは板書を一通り書き終えた後窓の景色を眺めていた。





強い風で、窓が揺れる。


(校庭も誰もいない、…ん？)


Aは、大きな桜の木の下に小さな影を見つけた。校舎の死角に佇む桜の木はAの席からは少しではあるが、見ることが出来た。





その木の下に、佇む少年が目に入った。

授業時間内であるはずなのに悠々と佇む少年は、Aの脳裏に深く刻まれた。

少年は、何をするでもなくただ桜を見上げていた。






1年生だろうか、いや2年生？…まさか、3年生？

この先単位を落すのは相当な痛手になる3年生が授業を蹴ってまで桜を見上げに行くなど、あまりにも愚かで勇気ある行動だとAは思わず感嘆の声が漏れそうになった。


ましてや、この蒸し暑さの中。おかしな少年だ、とAは黒板に目を向けた。




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