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‥
あの日から一年の月日が経った。
あの日、というのはもちろん俺が白石に告白した日のことだ。
短いようで長かったこの一年は、ずっと幸せで有頂天だったというわけではないけれど、俺の思い出には白石がいて、白石の思い出には俺がいればいい、とか思ってる。
正直、一年も待たせて、縛っていることに情けなく思うが、俺の気持ちは強くなっていく一方だし、白石も分かりやすく好意を見せてくれるようになったから、校内で俺が一番リア充してる。たぶん。
白石が俺を訪ねてきたのは、その日の昼休みだ。
手を引かれ適当に空き教室に入れば、そのまま彼女の両手に右手を握られ、一年間一緒にいてくれてありがとう、という旨の言葉を伝えられた。それから、これからも一緒にいてほしい、と。
白い頬に桃の花弁を散らし、長い睫毛を恥ずかしげに伏せる彼女がいじらしくて、抱きしめてしまいそうだった。
部活が忙しいなんて言って一緒にいられなかったことで振られるとも思っていたから、内心安堵したことは秘密だ。
一年経ったし、別に、記念日じゃないけど。
白石の喜んだ顔が見たくて、部活後青根と雑貨屋に来ていた。ちなみに今日の部活は午前で終わりだ。
……随分とファンシーな雑貨屋に入ってしまったと後悔した。長身の、片や強面の男二人がこんなところに入るべきではない。とはいえマネージャーの滑津は友人との用事でいない。
なにかを訴えかける青根に頷く。
「分かってる。早く決めて早く出るぞ」
「……」
言ったはいいものの種類が多すぎてなにを選んでいいのか分からない。女子ってこの中から選んでるのか。そりゃ時間もかかる。
白石の私服を思い出せ。白石の私服はどれも女子って感じのする服だった。
せまそうに、そして居心地の悪そうにしている青根がなにやら指を指している。
そこにあるのはネックレスで、シンプルで小さいが輝きを放っているのがどこか白石みたいだ、と思った。
「あー、これにするわ。先外出てていいぞ」
「……」
レジでお決まりの如く、彼女さんにプレゼントですか、と聞かれ、まあ、なんて濁したが、来月には自信を持って頷けるようになりたい。
綺麗に包んでもらった袋を受け取ると頬を桃色に染めうれしそうに笑う白石の顔が思い浮かんだ。
まだ、付き合ってないけど。受け取ってくれっかな。
もう青根とは来ないだろう入口をくぐって、ガラにもなく五回くらい感謝の言葉を言った。
‥
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幸(プロフ) - あんみつさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて本当に嬉しいです……!こちらまだ単行本未収録でしたか!申し訳ないです。注意書き追加しておきます。 (2020年3月1日 9時) (レス) id: 08804b505e (このIDを非表示/違反報告)
あんみつ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白くて更新凄い楽しみにしてました!!すごいキュンキュンさせられてました!最後の方に本誌ネタがあるんですが多分単行本派の方もいらっしゃると思うので本誌ネタ注意と書いておいた方が良いかと…… (2020年3月1日 8時) (レス) id: 86e8f7f917 (このIDを非表示/違反報告)
幸(プロフ) - 橘さん» コメントありがとうございます!私の書く二口くんにときめいてくださっているのなら嬉しい限りです! (2020年3月1日 2時) (レス) id: 08804b505e (このIDを非表示/違反報告)
橘 - とても面白く二口くんにキュンキュンさせられてますww (2020年2月9日 19時) (レス) id: a7677655c7 (このIDを非表示/違反報告)
幸(プロフ) - アヤミさん» コメントありがとうございます!少女漫画のイケメンような二口くんを書きたいと思い作成したので、そう言っていただけて本当に嬉しい限りです!応援ありがとうございます、これからもこの作品を宜しくお願い致します。 (2020年1月16日 22時) (レス) id: 08804b505e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:幸 | 作成日時:2020年1月13日 19時