検索窓
今日:16 hit、昨日:25 hit、合計:131,987 hit

17 ページ17







呼吸はすべて飲み込まれた。

わたしの瞳から零れた涙が彼の頬を伝って、まるで彼が泣いているかのように見えて。
濡れた頬があまりにも美しくて、気が付けば涙は止まっていた。

静かに離された唇は、微かに熱をもっている。
止まった、?と囁かれればひとつ頷くほかない。彼は泣きそうな顔で笑いながら口を切った。




「俺、白石が好きだよ」

「っ、うん」

「他の男が白石のこと見てるだけで嫉妬するくらい、好きなんだよ」

「ふたくちくん、」

「だから別に、嫉妬しても自分を責めんなよ」




そう言って、やさしい笑顔で頭を撫でる掌にひどく安心した。

こんな、屋上の手前まで来てしまって、もうとっくにチャイムは鳴っているというのに。


むしろうれしい。と掠れた声が黒い感情を溶かしてゆく。




「俺ばっかり、白石のことすきだったから、安心した」

「そんなこと、ないよ」

「でも急に走り出すからマジびびった」

「ご、ごめん……」

「あと、さっきのは白石とのことからかわれてただけだから気にすんな」

「ん、」




至近距離で微笑まれ見惚れていると、その整った顔がまた近づいてくる。


もう一度、お互いの熱を分け合って、彼の唇を見て口許がゆるむ。

二口くんに手を伸ばし、親指で唇をなぞれば紅に染まった。




「リップ、ついちゃってたよ」

「……じゃあ、おそろいだな」

「……ふふ、似合ってるよ」

「あー……。付き合うまでは手ぇ出さないって決めてたのに」




隣に腰を下ろして項垂れる彼の手を取り、指を絡ませる。自分のとは違う骨張ったそれにどきどきしてしまう。




「いまだけ、」

「……え」

「いまだけ、いいよ、?」

「……白石から言うのはずるくね」




頬を撫でるやさしい手つきが心地良くて、擦り寄るように目を伏せる。


二人の影が重なるのを、扉から漏れる光だけが知っていた。




18→←16



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (283 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
596人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 二口堅治
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - あんみつさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて本当に嬉しいです……!こちらまだ単行本未収録でしたか!申し訳ないです。注意書き追加しておきます。 (2020年3月1日 9時) (レス) id: 08804b505e (このIDを非表示/違反報告)
あんみつ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白くて更新凄い楽しみにしてました!!すごいキュンキュンさせられてました!最後の方に本誌ネタがあるんですが多分単行本派の方もいらっしゃると思うので本誌ネタ注意と書いておいた方が良いかと…… (2020年3月1日 8時) (レス) id: 86e8f7f917 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 橘さん» コメントありがとうございます!私の書く二口くんにときめいてくださっているのなら嬉しい限りです! (2020年3月1日 2時) (レス) id: 08804b505e (このIDを非表示/違反報告)
- とても面白く二口くんにキュンキュンさせられてますww (2020年2月9日 19時) (レス) id: a7677655c7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アヤミさん» コメントありがとうございます!少女漫画のイケメンような二口くんを書きたいと思い作成したので、そう言っていただけて本当に嬉しい限りです!応援ありがとうございます、これからもこの作品を宜しくお願い致します。 (2020年1月16日 22時) (レス) id: 08804b505e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年1月13日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。