検索窓
今日:88 hit、昨日:52 hit、合計:1,535,925 hit

58 ページ8

食堂を出て部屋へ戻る途中、後ろから誰かがこちらへパタパタと走ってくる音が聞こえる。
自分を呼ぶ声に振り向くと、そこにはロボロがちょこんと佇んでいた。

「A、シャスティアの外交官が来てんの聞いた?」
『はい、ですのでしばらく部屋へこもろうかと』
「やっぱそっか。あ、昨日のアレ持っとるよな?」

ロボロの言うアレと言うのは小型のスイッチのことだ。
昨晩部屋へ戻る前にこっそり渡されたそれはポケットに入れても目立たない大きさで、押すと緊急信号が発信される装置らしい。
一人の時に何かあったり困ったりしたら押してくれ、と渡されたそれを昨晩早速ゾムに使いそうになったのは秘密である。


『ちゃんと持っていますよ』
「良かった。俺らも見張っとくから大丈夫やと思うけど、他所の奴が入ってくる訳やし困ったら遠慮せんですぐ押してや」

にかっと笑ってロボロはすぐに去っていく。
セキュリティーの仕事に戻ったのだろう。
自分も他所者なのだがいいのだろうか。
そんな矛盾を抱えつつも彼の裏のない好意は素直にありがたく受け取っておくことにした。





部屋へ部下二人を招き入れ、大人しく会談が終わるのを待つ。
世間話を挟みつつも、やはり話題に上がるのは仕事の話だ。

「…会談はどうなるのでしょうか」
『どうもこうも、聞き出すことだけ聞いてお断り、だと思うけど』
「しかし、相手の内容によっては多少の援助くらいはする可能性もあるのでは…?」
『私達を油断させておいてってこと?可能性はあるかもだけど、もしそうだとしたら誰かしら付き添うなりしてこちらを監視しているだろうし、うちとマレーネの両国を余程潰したいとかじゃない限りは現時点でシャスティアと組んでもあまり得しないでしょ。…ただ、まあ、うん』


言葉を濁らせるAに不思議そうな顔をする部下達。
突然すぎる宣戦布告、電撃戦を仕掛けたはいいものの足りない兵力、周囲に根回しもせずに困った時だけ泣きつく。
そんな稚拙な立ち回りをするシャスティアの上層部とは正直まともな話し合いができるとは思わない、場合によっては逆上しそうだ。
我々国の協力が得られなかったことから変に暴走したりしなければいいのだが。
そんなことを危惧しつつも、結局今できることは何もない。
相変わらずの自分の無力さにため息が出た。



尚、この予想は後日最悪の形で当たることになる。
しかし頬杖をつきながらダラダラと部下と話す今のAがそれを知る由もなかった。

59→←57



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (816 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1431人がお気に入り
設定タグ:d! , wrwrd! , 実況者
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます! (2019年5月10日 23時) (レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです!ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ! (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…!?まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…!お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:璃亜 | 作成日時:2017年5月24日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。