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夕食を終えた後は部屋でいつものアステール会議。
部下二人の報告を聞き、情報を共有し合う。
日中でもいいのだが急ぎでないなら夜にまとめて聞いた方が時間も取れるし効率がいい。

一緒に視察に出た部下はちゃんとした書類ではないがAのメモよりは丁寧に内容をまとめていた。
A一人の目では気がつかなかった事柄もあった、将来有望だなと考えながら彼とその内容を話し合う。
一方城に残っていた補佐官はオスマンの部下とそれなりに親しくなったらしい。
その繋がりで現在の戦況もきちんと把握していた。
もう彼は補佐官どころか普通に外交官としてやっていけると思う。


解散した後はようやく自分の時間だ。
元々持ってきていた書類を眺め、それから窓を見る。
何もできないのはもどかしい。
もやもやとした気持ちがAの心を支配し始めた時、窓の外で何かの影が揺れた。

『!』

途端に走る緊張。
すぐに椅子から立ち上がってポケットに片手を入れる。
そのまま周囲を警戒しながら窓の外を凝視していると、先程よりもはっきり影が映った。
人だ。
それだけわかるとAは素早く後ずさり窓から距離を取る。
侵入者か、それとも自分を狙う輩か。
ポケットの中に入れた手に力を込めようとした時、ふと異変に気がついた。
窓の外の誰かが身振り手振りで何かを伝えようとしている。
目を細めながらゆっくり近づくと、それは見覚えのある面影だった。


『……何をしていらっしゃるのですか、ゾムさん』

少しだけ窓を開けると彼は乾いた笑みを浮かべた。
その片手にはロープが握られており、最上階の辺りから吊るしたそれを頼りに壁に足を掛けている。

「いや、ちょっと夜の見回りにな」
『ずいぶんアクロバティックな方法で見回りをされるのですね。賊か侵入者かと思ってしまいました』
「すまんって。驚かせたのは反省してる。けど自分他国で平和ボケしてへんかなと思ってな」
『そうですか、その点に関しては大丈夫です。で、本当の理由は何でしょう』
「普通に降りんのめんどかった」

問えばあっさりと答えるゾム。
面倒だから壁伝いに降りるという理論はAにはさっぱりわからない。
相変わらず彼の思考回路は謎だ。

『見回りお疲れ様です。ではお休みなさいませ』

これ以上関わらないでおこう、そう決めて窓を閉めようとすると、

「ちょ、ちょお待ってや、少し話さん?」

若干慌てたように声をかけられた。

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はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます! (2019年5月10日 23時) (レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです!ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ! (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…!?まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…!お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:璃亜 | 作成日時:2017年5月24日 22時

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