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橙色に染まる空、少しだけ強めの風。
白い煙草の煙が未だ宙に昇り、揺れるストールが静止画のような光景に動きをつける。
美しい背景と物静かな雰囲気に少し呆けてしまったが、出で立ちや服装、態度から相手がそこそこの地位の人間だと気づいたAはすぐに切り替えて頭を下げた。
『初めまして。アステールの第一外交官を務めております、Aと申します。シャスティアが宣戦布告した際に外交でお邪魔しており、現在諸事情で一時的にこちらで保護していただいております』
簡潔に身分と現状を説明すれば、男は思い当たる節があったのか納得したようだった。
片手に持っていた携帯灰皿に煙草を押し付けるとすぐに火を消してしまう。
「ああ、保護しとるって君のことやったんか…。ご丁寧にどうも、自分は一応ここの幹部やっとります。周りからは兄さんって呼ばれとるかな。別に誰の兄弟でもないんやけど」
どこかで聞いた名前だ。
昨日夕食の席で誰かが帰ってくるような話が出ていたが、その彼だろうか。
「確か貿易関税の引き下げしてくれた人よな。自分そういうの担当してるんで助かりました。…正直それまでは関税高くて仕入れんの大変やったんで」
苦笑を浮かべる兄さんの言う貿易関税の引き下げはAが最初にこの国に提案した条約だ。
そこから我々国との付き合いが始まったのだが、こうやって現場の人の声を実際に聞けるのはAとしてはとても嬉しい。
それなりに好評であれば尚更、自分の仕事が実になっている実感を得られる。
『お役に立てて良かったです。滞在中ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします』
「いや、絶対にうちの奴らの方が迷惑かけてるやろ。癖のある奴ばっかりなんで」
若干遠い目をする彼ももしかしたら苦労人なのだろうか。
しかしどこか達観している、と言うよりいろいろと諦めている気もする。
思わずAも苦笑を浮かべた。
『大丈夫ですよ。他国の私達にもいろいろと良くしていただいてます』
「ほんま？まあ何かあったらトントンに言うてな。俺でもいいけど」
『はい、ありがとうございます。…ええと、何とお呼びすれば良いでしょう？』
兄さんと名乗られたが、自分もそう呼んでいいものか。
それに対して本人は何でもいいと言う。
既にさん付けなのにさらに敬称を足すのはおかしい。
しかしいきなりフレンドリーに接するのも失礼じゃないか？
呼び方を指定されないことがこんなに困るとは思わなかった。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます！ (2019年5月10日 23時) (
レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです！ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ！ (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…！？まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…！お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年5月24日 22時
