【wrwrd!】とある社畜外交官の憂鬱

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基本的に冷静なAが人前で声を荒げることは少ない。
落ち着いた外交と丁寧な指導には定評がある。
しかしその日は違った。

『はあ！？』

突如室内に響いた声に部下達が驚いて顔を上げる。
どうしました！？と慌てる者を何とか宥め、とりあえず冷たい水を頼む、と力ない声で呟いたAは大きくため息を吐いて机に広げていた手紙に再び視線を落とした。

送り主は先日外交で会った我々国のオスマン。
挨拶から始まり、先日の礼が書かれているところまでは良かった。
その後に続く文章が問題なのだ。


次回の外交に総統が同席を希望しておりますが、よろしいでしょうか？


そこで冒頭へ戻る。

結論から言えば勿論答えは是だ。
と言うよりそれ以外の選択肢は実質存在しないので形式だけの質問である。
しかしAの心情からすれば全くよろしくない。
国のトップに会う機会を得たのは普通なら大きな収穫だが、残念ながら前回でそこまでの信頼を得たとは思っていない。
何せほとんど牽制のし合いと互いの様子見で終わったのだ、それは恐らくオスマンも理解しているはずである。

ならば何故切れ者と噂の総統自ら出てきたのか、そして何故オスマンもそれを黙認しているのか、もう何を考えているのか訳がわからない。
ただ一つハッキリしているのは向こうには何らかの思惑があるということだけである。

『…馬鹿じゃないんだからいきなり理不尽なことを言われたりはしないはず…女好きって噂も聞かないからその線も無い……同席ってわざわざ言うくらいだから外交する気はあるのか…』
「…A外交官？」
『ああ、ごめん。水ありがとう』

グビッと一気に水を流し込むとAはようやくいつもの冷静な顔で部下達を見据える。

『第二外交官、二週間後って他に外交入ってないよね？』
「はい、我々国との外交のみですが…もしや？」
『メンバー変更。我々国へは第二外交官と向かう。基本は私がやるけどあっち総統出てくるから、万一の時はオスマン外交官の相手よろしく。こっちも相当手強いから資料に目を通しておいて』
「はっ！」
『あとお土産も変える。この前の店のチョコ手配しといて。特別仕様のって言えばわかるから』
「では自分が！すぐに行って参ります！」

バタバタと動き出した部下達を一瞥して便箋を取り出す。
そしてさっさと手紙の返事を書いて部下に渡すと痛む頭を無視して次の書類に取り掛かった。

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