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結局大量のサラダはロボロの元へ運ばれた。
山盛りの野菜を物ともせずに笑顔で食べ続ける彼の胃袋はどうなっているのだろうか。
しかしそんなことよりも今はこの男である。
「なあなあ、何で俺が身体使う仕事やと思ったん?俺自分にそういう話何もしてへんと思うんやけど」
何故か楽しそうに聞いてくるゾム。
もうすっかり食べさせることから興味が移った様子だ。
『違ったのなら失礼いたしました』
「いや、合っとるよ。ただ何でなんかなぁと思って」
これは答えないと解放されないパターンだな。
煙に巻くことを早々に諦めて彼の方へ向く。
『先程のお話からですかね。会談でお会いしたことはありませんし、気を遣う必要がないとわざわざおっしゃったのは外交や内政に関わりがないから無駄だということでしょう?…後はお身体が机に当たった時に固い音がしたので』
ご納得いただけましたか?
何を仕込んでいるのかは言及せずにそう問えば、彼は長い前髪の下で一瞬目を見開いた後、ニヤリと笑みを浮かべた。
「へえ、やるやん。もしかして結構強かったりするんちゃう?」
『残念ながら私はただの外交官です』
「ただの外交官はそんなとこ気がつかんやろ」
『オスマンさんならもっといろいろ気がつくと思いますよ』
おっと巻き込まれた、と呟くオスマンの声がどこかから聞こえてきたが放置だ。
楽しそうにそんなことを言われても全く響かない。
そしてゾムは何故そういう思考に至ったのか全くわからない。
本当にただの外交官なので勝手に手練れ扱いしないでほしいのだが。
「なあ、自分体術と剣術と射撃やったらどれが得意?」
『どれも得意とは言えませんね』
「えー、じゃあ戦車?爆弾?」
『そちらも専門外です』
「じゃあ何が得意なん」
『…あえて言うなら“口撃”でしょうか』
真正面から微笑んでやる。
ゾムはまた目を丸くすると面白そうに肩を震わせ始めた。
「せやった…!グルッペンとやり合うくらいやもんな…そらそうやわ…!」
『…ひとらんらん様、私何かおかしなことを言ってしまったでしょうか』
「いや、全然。まあでもゾムのめんどくさい絡みに対してよくやったと思うよ。あと様とか付けなくていい。部下じゃないんだし」
「あ、俺もいらんから…!」
「どんだけウケてんだよ」
苦笑しながら言うひとらんらんとまだ肩を震わせているゾム。
何だかわからないが以前よりは少し心を開いてくれたような気がした。
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ゆう - メンバー同士の掛け合いもリアルでテンポよく、話の構成もしっかりしていてとても読み応えがあり面白いです!言葉の選び方や設定まで凄く丁寧で尊敬します。小説として面白く、それでいて『リアル』を崩す事なく描かれていて凄いと思いました。 (2019年8月4日 23時) (レス) id: 7c238edc15 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - もちえもんさん» コメントありがとうございます。沢山のお褒めの言葉、嬉しいです!書きやすい方と掴みきれていない方でどうしても差が出てしまうのですが、なるべくいろんな方と絡めるように頑張ります。 (2017年5月18日 2時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
もちえもん(プロフ) - 恋愛一色ではないのにこんなに好きになった小説は初めてです。メンバーと仲良くなっていく過程が早すぎず、自然で素晴らしいです!キャラが掴めていて、言葉遣いが上手で尊敬します。今後とも楽しみにしておりますm(_ _)m (2017年5月17日 23時) (レス) id: 801b233da8 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 那月さん» コメントありがとうございます。読みやすいですか…!ありがとうございます!話の進みは遅いですがよかったら今後とも見ていただけると嬉しいです。更新も頑張ります! (2017年5月16日 13時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
那月 - 夢主ちゃん苦労人ですね;´`文面もきちんとしていてとても読みやすく、面白いです…!!昔ほど酷くないですが未だにやや男尊女卑の所があるのでそこも共感して読めます。これからどのように夢主ちゃんが戦っていくのかとても気になります。更新頑張ってください(*´-`) (2017年5月16日 3時) (レス) id: 329c4228b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:璃亜 | 作成日時:2017年4月30日 2時