34 ページ34
白い天井、白い蛍光灯。
徐々にまぶたを開いた先に映った景色は見覚えのないものだった。
目が覚めると知らない天井だったなんて、一体どんな小説だろう。
ぼーっとした頭でどこか現実離れしたことを考えていると、近くから不意に物音が聞こえた。
「あ、起きた？」
聞き覚えのない声。
しかしその言葉はAに現実を思い出させた。
『ッ！』
「ちょ、待って！急に起き上がったらあかんから！」
慌ててこちらへやってきた男性によってベッドへ戻される。
見上げると男性は安心させるように穏やかに微笑んだ。
「僕はここの軍医なんよ。皆にはしんぺい神って呼ばれてる。Aちゃん、やな。話は聞いてるで」
『しんぺい神様…ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
「ううん、それは全然。これが仕事やからね。でも君は働きすぎ。倒れたの覚えてる？」
『…はい』
「多分過労やと思うよ。できれば点滴打ちたかったんやけど、君の部下にも反対されたし、君も起きた時警戒してまうかなって思って」
今呼んでくるねーと気さくに声をかけて遠ざかるしんぺい神。
少しするとバタバタとこちらへ近づいてくる足音が聞こえてきた。
上から覗き込んでくるのは見知った部下二人。
「A外交官！ご気分は…！？」
『心配かけてごめん。大丈夫』
「いやいや、まだ顔色も悪いやん」
『しんぺい神様、お言葉ですが私の顔色はいつもこれくらいですので』
「じゃあ尚更ダメ。やっぱ点滴打たしてもらってええ？」
そこへ更に足音が近づいてくる。
医務室であろうこの部屋へ入ってきたのはこの国のトップとその右腕だった。
「目が覚めたか？」
『…はい。ご迷惑をおかけしました』
「いえ、それよりもお加減はいかがですか？」
『大丈夫「大丈夫ちゃうってばー」
遮るように被せてきたしんぺい神に無言で視線を送る。
しかし彼は意に介した様子もなくにこりとAへ微笑み返した。
「…まずは倒れていた間のことを話すか。そうでなければ落ち着かないだろう」
「A外交官殿、勝手ではありますが御付きの方々とご相談させていただき、御国へ貴女方を保護する旨を伝えることになりました。シャスティアとマレーネは既に戦闘を始めていて危険ですので、今しばらく滞在していただきたいのです」
「君の体調のことも知らせようとしたが、それは君の部下に止められた」
グルッペンの視線が向けられた先は、運良く連れてきていた日頃から信頼している補佐官。
よくやった。
さすが仕事の出来る部下は違う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2064人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆう - メンバー同士の掛け合いもリアルでテンポよく、話の構成もしっかりしていてとても読み応えがあり面白いです！言葉の選び方や設定まで凄く丁寧で尊敬します。小説として面白く、それでいて『リアル』を崩す事なく描かれていて凄いと思いました。 (2019年8月4日 23時) (
レス) id: 7c238edc15 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - もちえもんさん» コメントありがとうございます。沢山のお褒めの言葉、嬉しいです！書きやすい方と掴みきれていない方でどうしても差が出てしまうのですが、なるべくいろんな方と絡めるように頑張ります。 (2017年5月18日 2時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
もちえもん(プロフ) - 恋愛一色ではないのにこんなに好きになった小説は初めてです。メンバーと仲良くなっていく過程が早すぎず、自然で素晴らしいです！キャラが掴めていて、言葉遣いが上手で尊敬します。今後とも楽しみにしておりますm(_ _)m (2017年5月17日 23時) (レス) id: 801b233da8 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 那月さん» コメントありがとうございます。読みやすいですか…！ありがとうございます！話の進みは遅いですがよかったら今後とも見ていただけると嬉しいです。更新も頑張ります！ (2017年5月16日 13時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
那月 - 夢主ちゃん苦労人ですね；´｀文面もきちんとしていてとても読みやすく、面白いです…!!昔ほど酷くないですが未だにやや男尊女卑の所があるのでそこも共感して読めます。これからどのように夢主ちゃんが戦っていくのかとても気になります。更新頑張ってください(*´-`) (2017年5月16日 3時) (レス) id: 329c4228b4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃亜
| 作成日時：2017年4月30日 2時
