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目的がわかれば話は早い。
むしろ何故総統が出てきたのかという疑問が解消されてスッキリしているくらいだ。
お茶会も程々に、会話の流れで前回の提案の話を再び切り出す。
恐らく書記長は聞いていないんだろうとあたりをつけ、内容をかいつまんで説明すれば、彼は総統の隣で神妙な顔をして頷いていた。
反応も悪くない。
「両国の貿易関税の引き下げですか。確かに我々にとってはありがたい話ですが、そちら側にはメリットが少ないのでは?」
おっと、さすが書記長。
外交ではお互い折り合いを付けるか利益が一致しなければ成り立たないと良くわかっているようだ。
時に信頼関係がそれを飛び越えていくこともあり、Aとしてはそちらの方が得意なのだが。
『そんなことはありません。両国間での引き下げはスムーズな貿易と物資の流通に繋がりますし、商人が潤うことは国の発展へと繋がります。私共と致しましても御国の農産物や機器には以前から注目しておりましたので』
加えて武器の製造技術も高いことは知っているが、あえてそれは口に出さない。
共通敵国がいない限り下手に戦争を連想させる言葉を避けるのは友好関係を築く上で必須だ。
更にAの本音としてはここを足がかりにしたいのにこれ以上警戒されたらたまったもんじゃない、というところである。
その後もいくつかトントンから質問があり、踏み込んだ内容や痛い所を突く内容もある中Aは全てに答えきった。
最終的になるほど、と頷かせ納得したのを見た時にはやりきった気持ちでいっぱいになった。
オスマンはニコニコしながら様子を見ているあたり、もう彼の中で結論は出ているのだろう。
そして真向かいに座るグルッペンからの視線。
トントンへ説明している間中ずっと浴びていたものだ。
威圧感のあるものだが職業柄観察されるのは慣れているのでとりあえず視線を合わせて微笑んでおいた。
「…総統、どうしますか?」
「いいと思うゾ。兄さんが喜ぶだろうな」
「さいですか。まあ自分もいいと思いますけど」
「では決まりだな。A外交官殿、締結書類はあるか?この場にあるなら私自らサインしよう」
総統自らのサインとなればそれだけ効力も大きい。
あるなら出してみろと言わんばかりだが、それは既に用意してある。
気が変わらない内にと素早く取り出して差し出せば、彼は僅かに瞼を開いてから書類の内容に目を通し始めた。
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ゆう - メンバー同士の掛け合いもリアルでテンポよく、話の構成もしっかりしていてとても読み応えがあり面白いです!言葉の選び方や設定まで凄く丁寧で尊敬します。小説として面白く、それでいて『リアル』を崩す事なく描かれていて凄いと思いました。 (2019年8月4日 23時) (レス) id: 7c238edc15 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - もちえもんさん» コメントありがとうございます。沢山のお褒めの言葉、嬉しいです!書きやすい方と掴みきれていない方でどうしても差が出てしまうのですが、なるべくいろんな方と絡めるように頑張ります。 (2017年5月18日 2時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
もちえもん(プロフ) - 恋愛一色ではないのにこんなに好きになった小説は初めてです。メンバーと仲良くなっていく過程が早すぎず、自然で素晴らしいです!キャラが掴めていて、言葉遣いが上手で尊敬します。今後とも楽しみにしておりますm(_ _)m (2017年5月17日 23時) (レス) id: 801b233da8 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 那月さん» コメントありがとうございます。読みやすいですか…!ありがとうございます!話の進みは遅いですがよかったら今後とも見ていただけると嬉しいです。更新も頑張ります! (2017年5月16日 13時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
那月 - 夢主ちゃん苦労人ですね;´`文面もきちんとしていてとても読みやすく、面白いです…!!昔ほど酷くないですが未だにやや男尊女卑の所があるのでそこも共感して読めます。これからどのように夢主ちゃんが戦っていくのかとても気になります。更新頑張ってください(*´-`) (2017年5月16日 3時) (レス) id: 329c4228b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:璃亜 | 作成日時:2017年4月30日 2時