・・・ ページ38
.
横に座ったAの右耳に触れる。
「また増えてる…」
「うん、なんかすごい痛かった」
「…バカだろ」
「慎だって開けてんじゃん」
Aの両耳に、位置もバランスも関係なく増えてくピアス。
俺のはファッションアイテムとしてだけど、Aのこれは一種の自傷行為にも思えてしまう。
「次は言って。 俺上手いから」
「わかったー」
俺だったら、ちゃんと大切にしてやれる。
そう思うしAにも言ったことがある。
「俺を彼氏にしとけばいいのに」って。
でもそれはダメらしい。
『慎は最後の砦みたいなものだから』
『恋人になってだめになったらどうする?』
『家族だってバラバラになっちゃうのに…』
『私は慎を失えないの…わかる?』
それってなかなかに大きくて重たくて…そして、どこか歪んでる。
「晩ゴハン食べてくでしょ」
「いいのかな」
「母さん用意してると思うけど…一応訊いてくる?」
「あ、待って」
「ん?」
「いつものやつ…やって」
「ん、いいよ…はい、」
腕を広げれば飛び込んでくる体をぎゅうっと抱きしめて、小さい頃に2人で考えた秘密の呪文を囁く。
悲しいことがあった時。誰かに傷つけられた時。何かに上手くいかない時…無敵になれる、ふたりだけの秘密の魔法。
仕上げに前髪を上げて、額にキスをひとつ。
「じゃあ下行こ」
「うん」
傷つくばかりの恋をしてやって来るAと、ただおとなしくそれを待ってる俺。
自分の中の大切なモノを守るために…どうするのが正解なのかなんてわからないけれど。
ふたりともお互いを失えないのは一緒だから。
これが歪な俺たちの愛のカタチ。
end
70人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょる(プロフ) - も。さん» はじめまして。たくさん褒めていただきこちらが嬉しくて叫び出しそうです…!ひとまずはもうひとつの作品の方を頑張りますね。感想頂きどうもありがとうございました! (2020年6月7日 21時) (レス) id: 7af395255e (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - こんにちは!お話全て読ませて頂きました、どれも素敵なお話で胸がキュンキュンして叫び出しそうになりながら読みました……これからも更新頑張ってください!猫みたいな〜の作品の方も読ませて頂きます! (2020年6月7日 17時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちょる | 作成日時:2020年3月1日 21時