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伊野尾君は結局、あの時急に付き合おっか、なんて言ったっきり、その返事を求めることはなかった。
そんな雰囲気を感じさせることもなく、
仲良くなり続けていて、
私はどうすべきなんだろうと気になりつつも、
彼が運んでくれるペースに任せ一緒に笑っていた。
今でもまだ時々周りの子に付き合ってるの？と聞かれるけど、こうして話していても周りからチラチラ見られることはなくなったし、私の穏やかな生活は、戻りつつあるのだ。
「やまー、行こーぜー。」
遠くから聞こえた声は、チーム分けのHRの間中ずっと無言だった(もしかしたら寝ていたのかもしれない)後ろの席にいるあいつへと注がれた。
背中の奥で重く、
ガタリと席から立ち上がる音がした。
あいつもサッカーだからグラウンド組だ。
同じ空間にいないだけホッとする。
いや、中学のときから球技大会やら体育祭やらで、
私の運動神経が途切れがちなことなんてあいつも十分に分かっているだろうから、今更何を言い訳することもないのだけど。
涼介「………俺サボるわ。」
椅子がだるそうに、ゆっくりと机の中に納まる音の中、欠伸を噛みながらもっとだるそうな声が聞こえた。
まじ？じゃー俺もー、なんて声に囲まれながら、
後ろの声たちはドアへと歩いていく。
そんなあいつの苛立ったような、小さな声は私だけじゃなく目の前の伊野尾君にも聞こえたようで、
伊野尾君は歩いていく彼らに
待て待て待てー、と呼び止めた。
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月16日 19時
