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伊野尾君と一緒に教室まで来て、中に入ろうとしたときに、ちょうど出てきた人とぶつかりそうになり慌てて足を止めた。
間近に見上げたその顔は、瞬時にあいつだと分かって直ぐに身を引くけど、
わざとらしく目を逸らすことは、我慢した。
慧「はよー、山田ー。
山田もサッカーだよなぁー？」
涼介「…………え？……は？」
慧「あ、そーいや、サッカー部の新人戦、1年で薮と二人だけメンバー入りしたんだってー？
もう俺突っ立ってるだけでも優勝しちゃうかもねー。でもA応援してねー。チアとかやってくれたら俺ゴール入れちゃうよ。」
無言な目の前の人と、
学校行事にやる気があるのかないのか謎な人。
温度差は明らかに激しくて、
このふたりは一生気が合わない気がした。
伊野尾君は球技大会の前に期末考査があることなんて気にもしていないようで、一人盛り上がって教室に入っていく。
そんな伊野尾君を冷めた目で見送るあいつは、
歩き出そうとこちらに振り向き、
静かに私に視線を寄越す。
私はその視線を真っ直ぐ返すことは
やっぱり出来なかったけど、
A「……、おめでと。」
涼介「……………、」
耳に入ってきていたメンバー入りの噂に
祝福を残し通り過ぎる、
進歩を、得た。
翼「おはよーAー、朝からイイオのお世話お疲れ！」
A「おはよ。」
席に着くと翼が寄ってきて、
私はまだ胸がバクバクしているけど、
穏やかに返事が出来た。
ずっと背中が痛かったこの席で、
ホッと息を吐いたのは初めてだった。
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月16日 19時
