2話 ページ6
それに気づいたAは苦笑いをするとハンカチを目に当てた
「そんなに泣いたら目が溶けちゃうよ」
「っく、僕、泣き虫だから…っ」
どうやら少年は他人より涙腺が緩いらしい
「ねえ少年。名前は?」
「っ…あとべ、けーご」
しゃっくりをしながらも答える
けーごくんか、いい名前だね
Aはそう言うと小さな頭を撫でた
ふわりと心地よい風が2人を包む
「ねえけーごくん。君には夢があるかな?」
「…ゆめ?」
「そう、これになりたい、あれになりたいとか、なんでも」
突然言われた夢について。彼は悩むように下を向くとポツリと言葉を発した
「…おーさま」
「…王様?」
「絵本に出てきた王様がね、すごくかっこいいんだ。皆を引っ張って、悪いやつを1人で倒しちゃうんだよ」
そう言うけーごの目はキラキラとして心の底から思っているようだった
「へえかっこいいね。じゃあけーごくんも頑張らなきゃ」
「え?」
「夢に近づけるように。何時までも弱虫泣き虫だったら王様なんてなれないぞー」
笑いながらいうAに対して少し不安そうに顔を伏せる
「…ほんとになれるのかな」
「あこがれを現実にできるのは信じるチカラだよ」
「信じる…」
少し難しかったようで首を傾げている
「んーとね、思いは君を成長させるってこと。テニスだってそうだよ。私が今から君とテニスをしても勝つ自信しかない」
「ぼ、僕だって!!」
そう焦るように言う少年に笑いかける
「そうでしょ?試合だって誰もが負けると思ってやる訳じゃない。対戦相手には負けない!って気持ちを持ってやる
だから力量では自分の方が上なのに相手にの想いが自分より強かったら自分が負けることもあるんだよ」
「思いが、強さに…」
どうやら伝わったらしい
彼はギュッとラケットを握りしめると立ち上がった
「僕、頑張る。強くてかっこいい王様になるんだ!」
「応援してる」
Aが頭を撫でるとまた少年の目に涙が溜まった
「っ…頑張る…僕、っく、頑張る…」
「あははっ泣き虫卒業するんだろー?」
少しして落ち着いた彼はねぇ、と口を開いた
「お姉さんって何時からここにいたの?」
「んー何時でしょう」
はぐらかされたと分かった彼はむっとなりもう1つ質問をする
「っ、お姉さんは何者なの?」
Aは目を少し大きく開けるとまたいつも笑顔に戻って答えた
「私はね…旅人だよ」
176人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雲雀 - まいさんへ俺は亀更新でも楽しみに待っています。なのでゆっくりでもいいので更新楽しみに待っています。 (2021年9月30日 19時) (レス) @page29 id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - 雲雀さん» コメントありがとうございます!亀更新ですがよろしくお願いします。 (2021年9月27日 12時) (レス) id: ed3b470f19 (このIDを非表示/違反報告)
雲雀 - 面白かったです。これからの更新頑張ってください!楽しみにして待っています。 (2021年9月25日 15時) (レス) @page32 id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まい | 作成日時:2021年5月3日 14時