【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ46)

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何時 ‐ kne ページ46

日が落ちるのが早く、頬をくすぐる風が冷たくなってきた

つい1週間前まで暑い暑いと騒いでいたクラスメイト達は今度は寒い寒いと騒いでいる

寒暖差が激しすぎて風邪を引いてしまいそう

18時なんてもう暗くて、駅までの坂を下るのも嫌になる

暗いのが怖いのかって、別にそういうわけじゃないんだけど雰囲気がさ、ね？

少し前を歩く女の先輩の髪が街頭に照らされて、少し茶色がかった髪色が浮かび上がっていた

「せーんぱい！ぼっちですか〜〜？」

「うわっ、叶くんか。びっくりした〜そういう叶くもぼっちじゃん」

普段後頭部の高い位置でポニーテールにしている先輩は、この時期になると髪をおろして綺麗に巻いている

その降ろされた髪に隠れて見えていなかったけどイヤホンで音楽を聴いていたらしい

僕の方を見ながらイヤホンを外す仕草は、会話を続けてもいいんだという安心感にも繋がったりする

先輩が部活を引退したから会う機会が激減して、こうして帰り道に少し話せるだけでもとてつもなく嬉しいのだけど

そんなこと言ったらどんな顔するんだろっていう想像をするだけで言えたことは無い

「夜道に女の子1人は危ないですよ？」

「守ってくれるの？ありがとー」

「もちろんですよ。手でも繋いどきます？」

同い年とか年下の子だったらさり気なく繋いで、余裕そうに笑って、ドキドキさせてってやるのに、A先輩相手だと何故こんなにも上手くいかないものか

守ってくれるの？って言われたんだから守りますよって自然に手繋いどけばいいものを

冬に恋が成立しやすいって言うのは単なるクリスマスのジングスとかだけじゃなくて、こういう甘酸っぱいのが多いからなんだろうなって思う

自分で自分の恋を甘酸っぱいっていうのもやばいけど

「ん。」

「え？」

「守ってくれるんじゃないの？」

先輩はそういい人だ。1枚上手なんだ

そんな先輩でも頬が赤く染ってるのは僕の気のせいではないはず

そういう僕も多分、それなりに赤いんだろうな

「キャラが崩れるじゃないですかー！！」

「なーに？イケメンキャラが良かった？やり直す？」

なんて、甘い空気を一瞬にして変えてしまう僕らに恋愛は向いてない

手を繋ぐのは初めてじゃないから、多分先輩も僕の気持ちに気づいてる

気づいててこうして繋いでくれているのだとしたら、同じ気持ちだと言っているようなものじゃないか

"好き"の2文字はいつになったら伝えられるんだろう

繋がれた手にギュッと力が入った