【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ37)

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初詣 - kzh ページ37

2礼2拍手1礼

隣にいる叶とタイミングを合わせてお参りをする

サラサラとした雪が降り続けていて、頭にはそれが乗っていた

参道は凍っている
足元に気をつけながらも急ぎ足で屋根のある所へと向かう

「お前髪白いから雪も分からんのよ」

そう言いながら雪を振り払ってくれる叶はお節介なやつだと思う

でもその手が頭に乗るのが心地よくて目を細めてしまうなんていうのは秘密

御守りを買うために人だかりに紛れ込む

少しでも人が少ない時間帯に、あまり混まないであろう小さな神社に来たというのに参拝者は数えきれない程いた

たくさんの人が御札や御守り、破魔矢などを買い求めて混んでいた

巫女が2人、忙しそうにしているように見えるが顔まではよく見えない

『あけましておめでとうございます』

2人の声が混ざりあって耳に届く

やっと御守りが買える

どれがいいかなと叶と2人で悩んでいると、上から声が聞こえた

「あの、どちらで迷っていらっしゃいますか？」

まさか声をかけられると思っていなかった俺は瞬時に対応できず固まってしまった

…彼女の容姿を見て

俺の様子を見て眉を下げ困った顔の彼女に叶が

「仕事と健康で迷ってて……」

普通にコミュニケーションを取っていた

いや確かにそれで迷ってたのは事実なんだけども、俺も巫女さんと喋りたい

「そうですね…でしたら"勝守(かちまもり)"はいかがでしょう」

「かちまもり？」

あまり馴染みのない名前に思わず聞き返す

.......叶が

もう1人の巫女は俺らの隣にいた参拝者の対応をしていてこちらのことを気にする素振りはない

俺にとっては全然好都合だからいいけど、ほんとにここ2人でやっていけんのか？と柄になく心配になったりもした

「はい。自分に勝つという意味が込められておりますので、病気に勝つとか、仕事とか、なんでも当てはめることができます」

「じゃあそれをひとつお願いします」

「あ、俺もそれで」

「かしこまりました」

丁寧に紙の袋に入れ、それぞれ渡してくれる

少し指先が触れたような気がしたけど、そんなの当たり前なのか彼女は一切気にしていなかった

「良いご参拝でした」

そう言って頭を下げる彼女が綺麗で、ずっと見ていたくて、でもきっと後ろにも参拝者がいるだろうから避けなければいけない

名残惜しい感じをわざと出して横にはけた

ほんとにらしくない