【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ32)

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曖昧 ‐ myzm ページ32

長い1日の授業が終わった放課後、委員会の仕事を頼まれてやってきたのは1階にある保健室

昇降口に近い場所にあるため、そのまま帰れるようにと荷物を持ってきた

ノックを3回して帰ってきた声は明るく爽やかな女性の声。人気な若い方の養護の先生だ

歳が近い先生なことに安堵のため息を零しドアを開ける

決してもう1人の先生が嫌いという訳では無いのだけど

少し苦手というかなんと言うか

保健室にはデスクに向かい作業している先生とソファーに座って参考書らしきものを読んでいる男子生徒の姿があった

私を認識するために上げられた先生の目線は、顔を見たあとすぐに私の手へと移る

「Aさん今日誕生日なの？」

あははーそうなんですーと笑って見せてお菓子が大量に入った紙袋を顔の高さに持ち上げる

見慣れた後ろ姿はこちらを振り向かずに教科書へ視線を落としたままだ

「ごめんね。ちょっと待ってて。」

「はーい」

先生の仕事が一段落するまで待つことに

「黛くん。久しぶりだね」

週に1回しか合わないけど、そこそこ話すようにはなった保健室登校の男の子

話しかけたつもりが聞こえていないのか彼からの返答はない

「黛くん？」

「A先輩先週来なかったですよね」

普段表情があまり動かない彼が少しだけムスッとした顔を作る

「ごめんって。体調悪くて休んでたの」

「……そうなの？それはごめん」

男の子らしくてスラッとした綺麗な指が開いていた参考書を閉じた

「それよりも、私今日誕生日！！」

自らおめでとうを言われに行くスタイル

毎週当番の日にはこんなやり取りをしているものだから先生も何も言わずにいてくれている

「もちろん知ってるよ。おめでとう先輩」

ニコリとも笑わないくせに思いが込められているのはよく伝わってくる

不思議な後輩だ

「ねえ、今日Aさん当番じゃないよね？」

黛くんとの会話が一段落したところでまた先生に話しかけられた

「３組の子に頼まれて来ました！外せない用事とかで……」

私の当番は明日で、今日は本当は来る予定ではなかったのだ

「あんまり優しいとそれに付け込まれるよ？」

「大丈夫ですって、明日はその子が来るので！」

「まあそれなら、、じゃあこれよろしくね。私ちょっと職員室に行くから」

保健委員の仕事は様々だ

私の学校では保健委員は楽な委員会として通っていたのだけど、世の流行病によって消毒だとか検温だとか養護の先生の仕事が増えてしまったため保健委員の仕事にも回って来るようになった