【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ30)

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『僕Aの誕生日仕事入っちゃったごめんね。でも前日は1日オフにしてもらったから！いっぱい楽しいことして美味しい物食べよ。どこ行きたい？』

『おうちでゆっくり？そっか〜じゃあ一緒に起きて朝ごはん作ってゆっくりしよ。そんでイチャイチャしよ』

『顔真っ赤〜〜A可愛い〜』

『ねぇA不足！早く明後日になれ！』

数日前の会話が次々と思い出される

連絡のない彼を心配している私と、叶さんなんて知らないと不貞腐れている私がいた

時間も時間で流石に瞼が重い

ベッドに入って充電コードにスマホを繋ぐ

その時点灯した画面に"ごめんね"とメッセージ通知があったことには気づけなかった

うっすらと目を開けると目の前には水色の壁があった

少し離れて正体を確かめようとするものの背中に回された誰かの腕にしっかりとホールドされていて動けない

それの持ち主が叶さんであることはとっくに知っていた

胸板にグリグリと頭を押し付けて彼の存在を改めて感じる

ぎゅっと密着すると程よく筋肉のついた体がモゾモゾと動いた

「ん、おはよう。昨日はごめんね」

「……おはよ。全然大丈夫だよ。お疲れ様です」

「うそ」

葛葉から聞いたよ、と

秘密にしててって言ったのにあの人は

「朝僕がいなくて悲しくて泣いちゃったんでしょ？それ話しててまた泣いたんでしょ？」

葛葉さん、この調子だと全部話してるなコレ

間違いなく事実であるのだが、"泣いた"ということを知られるのはなんだか恥ずかしくて否定も肯定もせずただ叶さんから目を逸らす

「ごめんね。ちょっとした用事が入っちゃってAが寝てるうちに済ませちゃおうと思ったんだけど急遽仕事入っちゃってそれで、」

「断れなかったんでしょ。大丈夫。分かってます」

仕方の無いこと

ずっとそう割り切って過ごしてきたのだから今更なんともないと言えば嘘になるけど、そんなに落ち込んでいる訳でもないのだ

VTuberの仕事はそういうことが度々ある

彼の仕事を縛ることはしたくないからこれ以上謝ってもらいたくなくて言葉を被せた

私は大丈夫だと分かってもらいたくて言ったのに叶さんの表情は曇ったままだ

「叶さん……？」

「いつも我慢させてたね。今ここで吐き出して。受け止めるから。本当にごめんね」

ずっと堪えていた何かが溢れるように飛び出してきた