幸か ‐ kne ページ29
「はぁ？叶がいない？」
今日はオフなはず
それは私も把握していることで、だからこそ今日ゆっくり起きて沢山一緒に過ごそうねって話していた
それなのに朝起きて隣にあるはずの温かさはなく、ベッド横のサイドテーブルにはスマホがコードから抜かれた後だけが残っている
リビングのカーテンが開かれているためトイレに起きたわけではなさそうで、玄関の靴を確認して涙が出そうになった
"一緒に起きて朝ごはん作ろ、久々に"
そう言っていたのは彼の方なのに
急遽仕事が入ったのかもしれないと自分のスマホを手に取るけど、それらしいメッセージは見つからなかった
葛葉さんだったら何か知っているかなと希望を抱いて連絡してみたものの何も知らないようで
彼が知らないということは多分誰に聞いても分からない
叶さんのスマホに電話をかけてみても電源を切っているのかつながることは無かった
約束を破るような人ではないし最近は喧嘩もしていない
私に愛想が尽きたのかなと考えてしまったけど、昨日の夜は2人で一緒に眠ったのだ
そんなわけが無い
寄りにもよってなんで今日なのだと、きっと何か事情があることを知っていても叶さんへの怒りの気持ちが湧いてきてしまう
連絡もできないほどの大切な用事が入ったのだと自分の中で考えを完結させた
恋人と過ごすはずだったよく晴れた暖かい日はもうそろそろ終わってしまう時間になっていた
朝から何度か電話をかけてみるものの、トーク画面には私からの不在着信履歴を最後に何も進んでいない
既読もつかない
代わりに葛葉さんが、きっと仕事で忙しいはずなのに私を気遣い連絡をくれていた
フラッとどこかに行っしまうような猫みたいな人だけど、でもちゃんと私を大切にしてくれているからこんなことは今までなかった
だらだらとスマホをいじりながらいつも通り扉を開けて帰ってくる彼を待っているけど、目の前の扉が開く気配はない
時計の針が真上を指した頃、スマホの通知が次々と鳴った
その中に彼の名前は見当たらない
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作者名：めろんぱん | 作成日時：2021年12月14日 23時
