【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ21)

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騙された ‐ fsm ページ21

こんなところに神社あったっけ

私たちの後ろにある影は長く伸び、綺麗に赤から紫へのグラデーションになっている夕焼け空は日が短くなってきていることを知らせている

友達と学校に残って定期テストが近いだとか花崎さんの好きな人が剣持くんだとかそんな話をした帰り道

どこからか現れたクラスメイトの伏見ガクと何故か一緒に帰ることになった。親しい仲と言われれば親しいのだろうが、ただ2年間クラスが同じで隣の席に何度かなったことがあるくらい

密かに想いを寄せていることは秘密

そんな彼と適当な話をしていると、気づけば大通りから外れ、田んぼ道へと続く道路を歩いていた

「あれ？伏見、駅あっちじゃない？」

学校の最寄り駅の方角を指さしながら彼に問うも、こっちが近道だからと聞く耳を持たなかった

表通りでは車が行き交い、お店の灯りがつき始めている

人間が作り出した人工物たちを嫌うようにそれは建っていた

竹林に隠れるように在る鳥居は綺麗な朱色をしていて、周りの緑によく映え目立っていた。田舎だから表から外れれば田んぼが広がり野生動物もいる

つまりはほとんど緑だからこんなに綺麗な朱があればすぐ気づくはずなのだ

今まで存在を知らなかった神社へのワクワクが胸の奥から溢れて、階段下で立ち止まっている伏見に早く行こうと声をかけた

「さっきまで早く帰ろうとしてなかったか？」

小言を言われたような気がするけど無視
一歩先を歩く彼は堂々と鳥居の真ん中を通ろうとする

「伏見ー、真ん中は神様が通るから私たちは端を通るんだよ」

知らないのかと思って声をかけたのに聞こえていないのかそのまま足を進めている

「よく知ってたッスね」

鼻で笑うように放たれた言葉。鳥居の中央を通った彼がこちらを振り返って言った。その横には2匹の狐が、、、否、狐の石像が遠くを見て佇んでいる。

一瞬本物の狐のような金色の毛並みが見えたような気がした。きっと気の所為だけど。

まるでその杜の主が帰ってきたかのように本堂の裏にある竹が風に揺られてサワサワと音を鳴らしている

今日は風なんて少しも吹かなかったのに

綺麗な紅い鳥居に比例するように手水舎や本堂も美しく、比較的最近建てられたものなのかなと感じた

怖いほどに人気がなく、人間が踏み入れて良い場所に思えない

どこか神聖な空気を感じさせるそれらは少し恐ろしい