コントラバスさんとの日常 ページ43
｢……元気ないね。何かあった？｣
｢あ……ううん、平気。何もないよ｣
｢……嘘、だよね。
話したくないことなら、無理には聞かないけど｣
｢あ……はは、やっぱりAちゃんにはバレちゃうか。なんとなく、そんな気はしてたよ｣
諦めたような微笑みを浮かべたあと、彼はぽつりぽつりと話し始めた。
｢……時々、考えるんだよね。僕って、本当にここにいてもいいのかなって｣
｢……どういう意味？｣
｢……ヴァイオリンたちは、まるで本当の兄弟みたいに接してくれるけど……それがたまに、すごく後ろめたい気持ちになる｣
現在では、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロと同じヴァイオリン属に分類されるコントラバスだが、その出自は彼らとは少し異なる。
彼は、ルネサンス時代からバロック時代にかけて活躍した『ヴィオラ・ダ・ガンバ属』にルーツを持つ。
人間に置きかえて考えれば、生まれた家が違う、という感じだろうか。……そういう意味では、確かに他の3人と一線を画していると言えるのかもしれない。
｢……兄弟たちは、みんな廃れていったのに……僕だけがのうのうと生き残って、新しい兄弟たちにも恵まれて。
兄弟たちは、きっと僕のことを恨んでるんだろうなって……そう考えたら、ちょっと怖くて｣
｢そっか。……『恨んでるはずない』なんて無責任なことは言ってあげられないけど……どちらかと言うと、喜んでくれてるんじゃないかな。コンバスが生き残ってくれたこと｣
｢え……どうして？｣
｢……君はヴァイオリン属の特徴だけじゃなくて、ヴィオラ・ダ・ガンバ属の特徴もちゃんと受け継いでる。その裏板もなで肩も、兄弟たちの特徴だよね。
だから、彼らに対して申し訳ないって思うよりは……兄弟たちの思いを背負っていくぞー、ってスタンスの方が、兄弟たちも喜んでくれるんじゃないかな、なんて……｣
コンバスは終始驚いたように目を丸くしていたが、そのうち可笑しそうに笑いだした。
｢……っふふ……君は本当に不思議な子だね。
チューバちゃんとも話してたんだ。……Aちゃんって “いい意味で”人間らしくないよね、って｣
｢そ、そう？｣
｢うん。……けど、だからかな。Aちゃんにだけは、不思議と気負わずに本音が話せるんだ。
だから……また話を聞いてくれると嬉しいな。君との時間も、僕にとってかけがえのないものだから｣
そう言って優しく微笑む。その表情に少しドキッとしつつも、迷わずその言葉に頷いた。
オススメの楽器さん
バスクラリネット
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もも - べるーがさん» なんか泣ける… (4月19日 0時) (
レス) @page44 id: 8826ef9895 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» すみませんお待たせしました！！ いつも以上に作者の趣味全開で書いてしまって本当に申し訳ないんですが、よければお納めください……🙇🏻♀️ (4月17日 1時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» そうです！！ (4月11日 0時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» リクエストありがとうございます〜！！ 一応確認したいんですけど、弦楽器のコントラバスで合ってますか……？？ (4月11日 0時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» リクエストでコントラバでお願いします！！！ (4月9日 15時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：べるーが | 作成日時：2023年3月1日 23時
