バスクラリネットさんとの日常 ページ36
「……Aさん。これ、良かったら受け取ってください」
そう言って手渡されたのは、ラッピングの施された小さな箱だった。中を覗いてみると、シルバーのブレスレットが入っている。
「ありがとう。……けど、どうして急に?」
「……こないだ、弟と妹が迷惑かけたみたいなんで」
「あぁ、エスクラのときか……あれくらい、全然いいのに。相変わらず律儀だよね、バスクラって」
吹奏楽では木低の中心核を担うバスクラは、クールな見た目に反して律儀で礼儀正しい性格だ。
「別に、普通じゃないっすか。
……けど、やっぱ迷惑っすよね。いらないなら捨てるんで」
「いやいや、嬉しいよ!? ……ありがとう、バスクラ。これ、付けてみてもいいかな」
そう訊ねると、彼は小さく首を縦に振った。箱のリボンをほどいてブレスレットを取り出し、腕にはめてみる。手首が締め付けられる感覚がくすぐったかった。
「…………すみません」
「えっ……な、なんで謝るの?」
「ブレスレットなんて、Aさんの仕事の邪魔になるだけじゃないっすか。……少し考えれば分かることなのに」
……バスクラは、そう言って俯いてしまった。男子にしては長い黒髪が顔にかかり、表情を覆い隠してしまう。
「いや、そんなことな……」
「さっきの言葉だって、本当は建前なんです。何でもいいから、Aさんに何か渡したくて……けど、気持ちばっか先走って、結局Aさんの重荷になっただけで」
「そんなことないってば!!」
私がそう声を荒らげると、彼は驚いたのかビクッと身体を震わせた。
「……嬉しいよ。嬉しくないわけないじゃん、バスクラからもらったプレゼントなのに」
「……! けど、ブレスレットなんて実用性のないもの、あんたの趣味じゃないでしょ。なのに俺は……」
「そんなこと関係ないよ。……君が私のために選んでくれたことが、どんな高価な贈り物よりも嬉しいから。
……それに、私に似合うって思ったから買ってくれたんでしょ? なら、もっと違うセリフが欲しいんだけど」
そう言って彼の目を見つめると、彼は降参したかのように小さく微笑んだ。
「っはは、俺のことなんか全部お見通しっすか。やっぱ、Aさんには敵いませんね。
____似合ってます。すごく」
……そう言って、彼は優しく目を細めた。
彼の
オススメの楽器さん
バスクラリネット
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もも - べるーがさん» なんか泣ける… (4月19日 0時) (レス) @page44 id: 8826ef9895 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» すみませんお待たせしました!! いつも以上に作者の趣味全開で書いてしまって本当に申し訳ないんですが、よければお納めください……🙇🏻♀️ (4月17日 1時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» そうです!! (4月11日 0時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» リクエストありがとうございます〜!! 一応確認したいんですけど、弦楽器のコントラバスで合ってますか……?? (4月11日 0時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» リクエストでコントラバでお願いします!!! (4月9日 15時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べるーが | 作成日時:2023年3月1日 23時