チェロさんとの日常 ページ4
演奏の難しさは、性格的な気難しさに反映される。つまり、演奏が難しいほど手懐けるのも難しい。
そのはず、なのだが……
「……久しぶりだね。会えて嬉しいよ、A」
「あはは……久しぶり、チェロ」
2日前に検品作業したばかりなのだが……彼にとっては久しぶりの範疇なのだろうか。
「……丸々1日会えなかったから、すごく寂しかったよ。
ふふ、今日はたっぷり“いちゃいちゃ”できるね」
「あはは、うん……いっつも思うけど、チェロって本当にヴァイオリンの兄弟?」
「そうだよ、俺がお兄ちゃん。……性格は真逆もいいところだけどね」
……演奏の難しさと気難しさは、必ずしも比例するわけではないらしい。
「……というか、Aは俺よりヴァイオリンの方が気になるの?」
「あっ……ううん、そんなことないよ」
この間見た時とそんなに変わってないけど……拗ねてるし、ちょっと念入りにお手入れしてあげようかな。
「……チェロはさ、なんでそんなに人間が好きなの?」
「俺たち楽器って、人間が弾いてくれないと、ただの置物でしょ? それに俺……人間の、俺を楽しそうに弾く顔が好きなんだ」
「そっか。……じゃあ、人間なら誰でも好きってわけでもないんだね?」
「俺に興味が無い人とかもひっくるめて、人間は好きだよ。……暖かくて、どこか歪で。そこが好きなのかな」
……特定の人物への好意と言うよりは、人類愛みたいなものなんだろうか。
「……変わってるね」
「そう? ……俺からすれば、ヴァイオリンの方が変わってると思うけど」
「あはは、確かに……触るだけで嫌がるもんね」
……2人とも考えが極端なので、正直なところどっちもどっちな気がしなくもない。
「……やっぱり、ヴァイオリンの方が気になるんだ」
「だから違うって。えっと……ほら、チェロが人間をみんな好きなのと同じように、私はどの楽器も好きだから」
「……Aは俺をなんだと思ってるの? 確かに人間は好きだけど……1番はAだよ」
「え……本当に?」
そう聞くと、彼はものすごい勢いで首を縦に振った。
「……やばい、めちゃくちゃ嬉しい……まさかそんな風に思ってくれてるなんて」
「えっ……なんで?」
「だって、人間なら誰でもいいんだと思ってたから。
……そっか、1番かぁ……」
「……! 何その顔、反則……」
そう言って、顔を隠すように机に伏せる彼。予想外のセリフに、当分にやけが治まる気配はなかった。
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バスクラリネット
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もも - べるーがさん» なんか泣ける… (4月19日 0時) (レス) @page44 id: 8826ef9895 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» すみませんお待たせしました!! いつも以上に作者の趣味全開で書いてしまって本当に申し訳ないんですが、よければお納めください……🙇🏻♀️ (4月17日 1時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» そうです!! (4月11日 0時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» リクエストありがとうございます〜!! 一応確認したいんですけど、弦楽器のコントラバスで合ってますか……?? (4月11日 0時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» リクエストでコントラバでお願いします!!! (4月9日 15時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べるーが | 作成日時:2023年3月1日 23時