ハープさんとの日常 ページ20
「……はぁ、はぁっ……重っ…………」
「はぁ……相も変わらず失礼な小娘だ。
生憎だが、僕は君のように足なんてついていないのでね。それに、これも君の仕事の範疇ではないのかね?」
細部に施された美しい彫刻、見る者を惹き付ける美しいフォルム……見た目の美しさも然ることながら、紀元前3000年前から存在していたとされる歴史の長さ。
そして、その見た目に負けるとも劣らない優美な音色。
そんな彼の欠点は、たったひとつだけ。それは……
「あはは、相変わらず面倒くさい性格してるなぁ……
仕方ないじゃん、普通2人がかりで運ぶところを私ひとりで運んでるんだし……ね?」
「だからと言って、面と向かって『重い』だなどと言う必要はないだろう? ……まぁ、君のデリカシーのなさは今に始まったことではないがね。
……さて、早速だが弦を替えてもらおうか」
「えぇっ、今から!? けど、どの弦もまだ切れてないし……まだ大丈夫じゃないかな?」
「ほう……随分偉くなったものだな、小娘。僕自身よりも、僕について分かっている、とでも言いたいのかね?」
ハープの手入れにかかる手間は、全楽器と比較してもトップレベルと言って差し支えないだろう。
……オブラートに包まずに言ってしまえば、とてつもなく面倒くさい。彼自身も、それに比例してかなり面倒な性格をしている。
「……至極当然のことだが、僕について1番よく分かっているのは、他でもない僕自身だ。……それくらい、いくら君でも流石に分かるだろう?」
「う……はぁ、やるしかないか……」
「よろしい。では、早速始めようか。……君は少々危なっかしいからね。細心の注意を払ってくれたまえ」
……今日も、お昼休憩は取れそうになさそうだ。デスクの上の昼食を恨めしく見つめながら、弦を張り替える準備を始めたのだった。
「……ハープさんってさ、昔からそうなの?」
「そうなの、とは具体的にどういう意味だい? ……曖昧な問いには曖昧な答えで返すしかないよ、小娘」
「……性格。昔からそんなに面倒くさかったの?」
「面倒? ……僕が?」
「えっ……うん。……ハープさん、まさかとは思うけど……自覚なかったの?」
彼は驚いたように、考え込む素振りを見せた。
……まさか、本当に自覚がなかったのだろうか。
ハーピストの人口が伸び悩んでいるのも、金銭面だけではなく、この面倒くささが根本にあるような気がする……
オススメの楽器さん
バスクラリネット
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もも - べるーがさん» なんか泣ける… (4月19日 0時) (レス) @page44 id: 8826ef9895 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» すみませんお待たせしました!! いつも以上に作者の趣味全開で書いてしまって本当に申し訳ないんですが、よければお納めください……🙇🏻♀️ (4月17日 1時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» そうです!! (4月11日 0時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» リクエストありがとうございます〜!! 一応確認したいんですけど、弦楽器のコントラバスで合ってますか……?? (4月11日 0時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» リクエストでコントラバでお願いします!!! (4月9日 15時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べるーが | 作成日時:2023年3月1日 23時