クラリネットさんとの日常 ページ19
「お疲れ様です、Aさん。コーヒー、よかったらどうですか?」
「あぁ、ありがとう。
……本当、クラは気が利くから助かるよ」
「いやいや、俺にできることなんてこれくらいなんで。
Aさんは確か、砂糖1つにミルク2つでしたよね?」
「……へぇ、よく覚えてたね。流石」
オケはもちろん、ジャズや吹奏楽でも大活躍のクラリネット。温かみのある素直な音色は、その性格にもしっかりと反映されているようだ。
「……クラがここに来るなんて珍しいね。どうしたの?」
「実は
忙しいとは思うんですけど、暇な時にでも診てやってくれませんか?」
「……わかった。今どこにいるの?」
「えっ、今診てくれるんですか?
けど、Aさん忙しいんじゃ……」
「うん。万が一のことがあったら大変だからね。
……案内してくれる?」
こっちです、と前を行くクラの後ろを大急ぎで着いていく。……人間と同じように、楽器にも『寿命』がある。手遅れになる前に、早く治してあげないと。
「……本っ当にすみませんでした!」
「どういたしまして。大したことなくてよかったね」
「あはは、はい……すみません、いつもと様子が違ったからつい表現が大げさになっちゃって」
……実際のところただのタンポの劣化だったので、タンポ交換だけで事なきを得た。今はケースの中でぐっすりと眠っている。
「うん。……それよりも」
「へっ!? な、なんですか……?」
おもむろに彼の手を掴むと、彼はかなり驚いたようで、
「クラ……ジョイントのコルク、結構劣化してきてるね。そろそろ交換しようか」
「えっ、でもAさん忙しいんじゃ……
ただでさえ、予定変更して妹を診てくれたのに」
「何言ってるの、予定なんかよりクラの方が大事に決まってるでしょ。……献身は美徳だけど、クラはもっと誰かに甘えることを覚えた方がいいと思うよ」
「……っはは、さすがAさんですね。
俺、いっつもそうなんです。誰かの迷惑になってないかって、そればっかり気にしちゃって。でも……」
ひと呼吸置いてから、彼は再び口を開いた。
「……そうですよね。
じゃあ、Aさんにだけは甘えてみようかな?」
___たまにはいいですよね。そう言って、彼は肩の力を抜くかのように、ふにゃりと微笑んだ。
オススメの楽器さん
バスクラリネット
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もも - べるーがさん» なんか泣ける… (4月19日 0時) (レス) @page44 id: 8826ef9895 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» すみませんお待たせしました!! いつも以上に作者の趣味全開で書いてしまって本当に申し訳ないんですが、よければお納めください……🙇🏻♀️ (4月17日 1時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» そうです!! (4月11日 0時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» リクエストありがとうございます〜!! 一応確認したいんですけど、弦楽器のコントラバスで合ってますか……?? (4月11日 0時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» リクエストでコントラバでお願いします!!! (4月9日 15時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べるーが | 作成日時:2023年3月1日 23時