【短編集】楽器さんたちとの日常

続き ページ13

｢……ここの音盤、結構古くなってきたね。
そろそろ新しいのに取り替えようか？｣


｢……好きにしたら。決めるのは僕じゃないし｣


｢あはは……じゃあ替えておくね。
えっと……他は大丈夫？ 痛いところとかあれば……｣


｢別にないよ。……それくらい、見て分からない？｣


｢ご、ごめん……｣


3人目は『木琴』の仲間であるシロフォン。他の楽器とは調律方法が異なるため、硬く明るい音色が特徴。そのためか、言いたいことはハッキリと発言するタイプである。

そこが彼の魅力でもあるのだが……もう少しオブラートに包んでくれたら、と思わなくもない。



｢レンタル先の人ね、私を見てすごくびっくりしてたよ。『うわっ、大きい〜！』って言ってた｣


｢貸し出し先って中学校だったよね？ 5オクターブのマリンバは初めてだったんじゃないかなぁ｣


｢ふふ、そうかも。中学校にいた他の楽器たちとも仲良くなれたから楽しかったなぁ。

だからね、そんなに悪いことばかりじゃなかったよ、レンタル。旅行みたいで楽しかったし｣


｢あはは、旅行気分だったんだ……｣


4人目はマリンバ。大昔のアフリカで誕生したとされ、フルートやハープと並ぶ最古の楽器のうちのひとつだ。ものすごく長生きらしいが、年齢不詳。

個性派ぞろいのマレパたちのリーダー的存在だが、アフリカの雄大な自然とともに育ったからか、おっとりしていて少し天然気味なところがある。



｢……終わったー！｣


｢Aさん、お疲れ様です〜
ふふ、おかげさまで綺麗になりました〜｣


｢ふふ、いえいえ。あんまり時間経ってなかったからなんとかなったね｣


｢……お疲れ、A……一緒に寝る……？｣


｢……そうだね、もう少し働いたら寝ようかな。
慣れない場所で疲れてるだろうし、先に寝てて｣


｢……ありがと。
……何その顔、僕だってお礼くらいちゃんと言うよ｣


｢ごめんごめん、つい……あはは、そう言ってもらえると頑張ったかいがあったな｣


｢ありがとう、またレンタル依頼が来たら教えてね。
今度はどこに旅行できるんだろう、楽しみだなぁ｣


｢あはは、旅行……なのかなぁ。
けどまぁ、マリンバが楽しそうならよかった｣



……4人いると、会話するだけでも結構大変だ。
けど、いつもは一対一が多いからなんだか新鮮だな。たまには、こういうわちゃわちゃしたのもいいかも……


そんなことを思いつつ、4人を楽器庫へと運ぶのだった。

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