偏頭痛2 ページ10
Aside
薬を飲んでから30分ほどが過ぎたけれど、頭痛は治まるどころが痛みを増してきていて…
まずいな…。
このままだと、吐き気も来ちゃう感じがする。
「ねえ、Aさん。」
「!!」
突然、背後からふくらさんに声を掛けられてびっくりした。
ふくらさん…
けんさんとは、付き合って3ヶ月になるんだけど、なんとなくクイズノックのみんなには、はっきりとは伝えられてなくて。
だから、
ふたりきりのときは、「A」「けんさん」だけど、
会社内では、「Aさん」「ふくらさん」って呼び合っている。
別に隠したいわけじゃないんだけど、あらためて報告するのも、なんかへん?
とか思ってるうちに今に至っている。
けんさんも、あえてみんなに言う様子もないし、ね…。
「はい。なんですか?」
「…頭、痛いんでしょ?」
なんとか笑顔を作って振り向くと、ちょっとだけ顔を近づけて、けんさんが小声でつぶやく。
目を合わせて、じっと見つめられると、私はそれ以上は嘘はつけそうになかった。
「…なんでわかったんですか?」
「んー、何となく。」
病は気から、なんてよく言うけど、不思議なことに、一度認めてしまうと痛みに我慢がきかなくなってきた。
「薬は飲んだ?」
「はい。でも、なかなか痛みが引かなくて…」
「無理はだめだよ。」
「でも…」
「おいで。」
隠していたことがちょっぴり気まずくて、俯いて答える私の返事を遮って、けんさんがどこかに向かって歩き出す。
私も席を立って、けんさんのあとを追った。
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作者名:さちもっち | 作成日時:2020年12月5日 0時