天才くんと偏頭痛ちゃん (ページ11)

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偏頭痛3 ページ11

Aside

着いたのはいつも撮影で使っている、大きなソファーのある部屋。

「痛みが引くまで、ちょっと横になってて。」

そう言って、
撮影部屋のピンクのソファーを指差すふくらさん。

全部お見通しなその様子に申し訳無さを感じながら、言われた通り素直にソファーに横になることにした。

けんさんは、横になった私の頭を一度だけ優しくなでて、離れていった。

「あの…」

離れていく後ろ姿をみると、なんだか急に寂しくなってきて、思わず呼び止めてしまった。

「ん？どうしたの？」

私の声に気づいて振り返ってくれたけんさん。
でも、
やっぱりこれ以上迷惑を掛けたらいけない。

「あ、えと…なんでもないです。」

「そう？」

そんな私の答えを聞いて、けんさんは今度こそ本当に撮影部屋から出ていった。

一人っきりの撮影部屋は、なんだかいつもよりも広く感じて、より一層寂しさがましてくる。

私はソファーに身を預け、早く痛みが引いてくれるように願いながらぎゅっと目を閉じた。

５分ほどが経った頃、誰かが部屋に入ってきた気配を感じる。
そして、私が寝転がっているソファーの頭のほうが少しだけ沈んで、誰かがそこに座ったことが分かった。

ゆっくり目を開けると、
そこには、ソファーの前のテーブルに自分のノートパソコンを置こうとしている、けんさんがいた。

「けんさん？どうして？」

戻ってくるとは思ってなかった私が、驚いて尋ねる。

「“一緒にいてください”って、Aの顔にかいてあるもん。」

そう言って優しく笑うと、さっきみたいに私の頭を撫でてくれた。

「ほんとは膝枕でもしてあげたいところだけど…」

「えっ…！！」

「職場だしこれで我慢してね。」

けんさんは、着ていたジップアップのパーカーを脱ぐいできれいに畳むと、私の頭の下に入れてくれた。

「おやすみ。」

枕代わりのパーカーからは、
当たり前だけどけんさんの匂いがして、
嬉しさと恥ずかしさと安心感につつまれながら、私はあっという間に意識を手放した。