【男主】人生記【eoh.eoh】

101枚目 ページ8

北海道のテレビは珍しいようでAは釘付けになっていた。

見ないCMを見てはおお、と声を漏らす。

「あんた、本当に隠し子じゃないでしょうね」
「違うって！真に受けんなよ」

母親の目線は彼に向いたままだ。

「A、親のところ出てきたんだよ」
「…………」
「行く宛てないなら来れば？って言った」
「…あんたにしては珍しいわね」

母親がそう言うのもわかる。
面倒なことは極力避けてきた俺だ。

「飢えてるみたいだから」
「……？」
「愛情、っていうの？あの傷も母親のせいだし」
「…ああ、そういうこと」

母親は俺の方を真っ直ぐみた。

「投げ出しちゃダメよ」
「しないよ」

それだけはしない。
そう決めていた。

彼はまだテレビを見ている。
あろまも懐かしいと見てる。

「A」

ゆっくりと首がこちらに回る。
そう見えるだけなのか、本当にゆっくりなのか。

「おかえり」

笑ってみせるとぎこちない「ただいま」が返ってくる。
それがおもしろい。

「ゆっくりしていってね」

母親の言葉にまたぎこちなく頷いた。
ロボットみたいなその動きがやけに可愛らしいと思う。

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