フロイドの思い 〜5〜 ページ30
Aがフロイドに抱きつく。
「こんなにすぐに消えない毒を見つけられたなんて、夢見たい…」
「……そーだね…」
「でも、これから一生、フロイド先輩に噛みついてもらわなくちゃいけないんでしょ？フロイド先輩、大変になっちゃう…」
「オレは…大丈夫だよ。それより小エビちゃんが毎回痛い思いするし、傷だらけになっちゃうよ
…」
「そのくらい平気ですっ。…でも、フロイド先輩がいない時に傷が薄くなってきたら…」
「いつも側にいるから、心配ないよ」
「私…、フロイド先輩がいなかったら、この世界にいられないって事ですよね？」
「うん…。だから、小エビちゃんは、本当にオレに会うためにこの世界に来たんだよ」
そうとしか考えられない。
事実、自叙伝の筆者も、出版社のスーザンも、異世界から来た相手と結婚している。
「一生…、ずっとフロイド先輩といるの？」
「イヤ？」
「ううん…。なんか…出来すぎてて、怖くて…」
「今度は消える怖さじゃなくて、上手く出来すぎた怖さねぇ…」
「フロイド先輩は怖くないんですか？こんなに上手く出来すぎた成り行きで…」
「別にぃ…。オレは小エビちゃんとずっと一緒にいられるのがいーから何とも思わねぇよ」
本当は違う。
しかしそれはAには言えない。
隠し通さなければならない。
しかし、いつかはバレる時が来る。
その時、Aはフロイドをどう思うだろう。
今のうちに打ち明けた方が良いのかもしれない。
それでもフロイドはAに言うつもりは無かった。
「私も、別にぃ。って思うようにしよっ！」
「うん。それがいーよ」
フロイドがAの頭をポンポン撫でた。
「そう言えばなんですけど…、今日の昼間って…、フロイド先輩その服着てましたっけ？」
「何で？」
「その時、まだ熱あったから、なんか記憶が曖昧だったせいかもしれないけど…」
「朝からずっと同じ服着てんじゃん」
「そう…ですよね…。ちなみに、どこかに行ってたり…、してないですよね？」
「オレずっと小エビちゃんの部屋にいたでしょ？」
「……そう…か…」
Aが首をかしげた。
「そんな事考えたって、今オレはここにいるじゃん。また熱出ちゃうよ？」
「はい…」
昼間いたのがジェイドだったとは気付かないが、Aは何か違和感を感じた。
そしてAがフロイドのメッシュの髪を触る。
「こっちがフロイド先輩」
「うん。反対がジェイドね。覚えた？」
「……うん…」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年4月23日 16時
