フロイドの毒 〜7〜 ページ13
「小エビちゃん。アズールが来たから、談話室に行くね。ちゃんと、様子見に来るから心配しないでね」
眠っているAにフロイドが優しく声を掛けた。
「…ん…。分かった…」
「うん」
Aが反応した。
「抱っこ…」
「うん…」
うなされているのか、眠りが浅いのか分からないが、フロイドはなるべくAの要求に応える。
フロイドがAを優しく抱きしめる。
「…ん…。どこ…行くの?」
「談話室だよ。アズールが来てる」
「私は…」
「大丈夫。寝てて良いの。後でちゃんとオレが来るから」
「消えない?」
「うん。消えない」
「うん…」
話が噛み合わない。
高熱の影響のようだ。
「ゆっくり寝ててね…」
Aからの返事は無かった。
フロイドがゆっくりとAから離れる。
「小エビちゃん…」
Aの返事が無い事を確認して、フロイドはアズールの待つ談話室に向かった。
「Aさんの様子は?」
「全然熱い。眠ってるかと思って声かけると、返事したりするんだよねぇ。かと思えば、その直後に返事なかったりさ」
「高熱が出ると、意識障害が起こることもありますからね。まぁ、Aさんはそこまで重い症状ではないようですが」
「で、重要な手掛かりになるって話は?」
「ええ。僕が昨日の夜見つけた電子書籍です」
アズールがフロイドにタブレットを渡す。
「本を探すより、ネットで検索してダウンロードした方が効率的ですからね。今回は特に時間もありませんし」
「『異世界の毒』。……そのまんまじゃん。胡散くせぇ…」
題名を見てフロイドが呟いた。
「これは自叙伝です。読み進めていけば分かりますが、Aさんが言っている事と合致する部分が多々ありますよ。毒についても…」
「自叙伝とか言ったってさ、どーせ面白半分で書いたフィクションだろ?」
「しかし、なぜこんな大手の出版社が出したと思います?」
「そんなの知らねぇよ」
「出版社に問い合わせしてみました」
「早っ!」
「時間が無いのだから仕方がないでしょう。それで、担当者が僕たちに会って話しを聞いても良いと言っています」
「は?何勝手に話し進めてんだよっ」
「フロイドが必要無いと思うなら、この話はこれで終わりです。せっかくの手掛かりを掴むチャンスかもしれないのに、もったいないですねぇ」
「会わねぇとは言ってねぇだろ…」
「ま、とにかく、その書籍を読むことをおすすめしますよ。担当者に会う気になったら、僕に連絡を」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月23日 16時